サイの角のように 独りよがり映画論

映画について自分勝手な感想の備忘録。ネタバレもあり。 ほかのブログから引っ越してきました。

『ヒメアノ〜ル』 おもしろうてやがて悲しき映画哉

 原作は『ヒミズ』『行け!稲中卓球部』などの古谷実

 監督は『銀の匙 Silver Spoon『ばしゃ馬さんとビッグマウス』などの吉田恵輔

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 前半のいささかのんびりしたラブコメから一気に転調する後半がとても恐ろしい。キャストたちはとても原作のイメージに合っていたと思う。マンガチックな顔立ちの濱田岳佐津川愛美がアホっぽくいちゃつくのは可愛らしいし、そのカップルからはじき出されてしまうことになるキモイ男役のムロツヨシはおいしいところを持っていった。

 とはいえこの映画の主人公は殺人鬼森田を演じた森田剛で、ジャニーズタレントがここまでやってもいいのだろうかという妙な心配をしてしまうほどだった。森田が演じるのは中学のときにいじめられ、みんなの前でオナニーをさせられたりした挙句に狂気に陥ってしまったという男。とにかく常軌を逸していて、手当たり次第に殺しはするはレイプするはで、完全に死刑は確定だからかえって恐いものがないという……。そんな男に狙われたから濱田と佐津川のカップルは大変なことになるのだが、最後はそんな森田にちょっと同情してしまうというところがミソだろうか。

 

 佐津川愛美がとてもよかった。マンガのキャラはもっとマヌケなところがあったように記憶しているけれど、佐津川愛美のくりくりした目はマンガのイメージにあっているし、結構大胆な濡れ場も演じていてびっくりした。濱田とのベッドシーンではバストトップは一応無理やり隠してはいるけれど、バックの体位でやられたりして奮闘している(この体位が別のシーンとカットバックされているところが見どころとも言える)。

『ひそひそ星』 園子温の念願だった作品

 園子温の最新作。オリジナル作品としては『希望の国』以来の作品。モノクロ(一部カラーもあり)でとても静かな作品。

 最近はバカ騒ぎばかりの作品が多かったのは、結婚もして雇われ監督として金を稼ぐつもりなのかと思っていたのだが、ここに来てオリジナル作品をシオンプロダクションの第一弾として、しかも娯楽を廃した芸術作として発表してきた。

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 現在、宇宙は機械によって支配され、人工知能を持つロボットが8割を占めるのに対し、人間は2割にまで減少している。アンドロイドの鈴木洋子は、相棒のコンピューターきかい67・マーMと共に宇宙船に乗り込み、星々を巡って人間の荷物を届ける宇宙宅配便の仕事をしていた。ある日、洋子は大きな音をたてると人間が死ぬ可能性のある「ひそひそ星」に住む女性に荷物を届けに行くが……。(映画.comより引用)

 

 ぼくがこの映画を観た日には上映終了後には、園監督の奥様であり主演を務めた神楽坂恵さんと、園監督のドキュメンタリーを撮った大島新監督との対談があった(ちなみに大島新さんはあの大島渚監督の息子さん)。

 神楽坂さんの本名は「園いづみ」だとか。園作品で「いづみ」という女性が主人公になりがちだったのは、園監督の母親が「いづみ」であったことでもあり、のちに奥様となる神楽坂恵さんも「いづみ」だったかららしい。そんな神楽坂さんはイベントではすっかりプロデューサーの雰囲気だった。

 この作品は園監督にとって大事な作品で、それを新会社の第一弾として近しい人たちだけでつくることにも意義があったようだ。大島新監督もこの時代にこうした作品がつくられるのは貴重なことと語っていた(この作品は『希望の国』と同じように福島の風景を捉えた作品でもある)。

 ただ一方で作品の感想としては「好みが別れるだろう」といったことも語っていて、ぼくも個人的には朦朧としながら観終わったというところ。本当に何も起きないのだ。水道の蛇口から水が滴るだけで1日が過ぎるとか、本当にミニマルな映画なのだ。

 静かな宇宙船の雰囲気とか、火をかかげながら歩き回るシーンなどあちこちでタルコフスキーを意識させる。タルコフスキーも眠りを誘う部分があるけれど、一度ぐっすり寝たあとにもう一度チャレンジするととてもその良さがわかる作品なのかもしれない。神楽坂さんは火をかかげながら歩き回るシーンで久しぶりに園監督に怒られたそうで、そんな意味でも園監督の本気度がわかるエピソードだった。園監督は意外と役者を追い込むばかりではないようだ。

 この作品は25年前に構想した作品とのこと。『ラブ&ピース』もかつてのアイデアの蔵出しという部分があるようだが、過去を整理した園子温がどこへ向かうのかはやはり気になるところではある。

『草原の実験』 大草原の小さな家に住む美少女

 場所は特定されないけれど中央アジア風の草原の風景のなかの1軒の家。そこにモンゴロイド風の親父とその幼い娘が住む。少女には幼馴染の馬に乗った若者がいるが、ある日、金髪の青年が現れる。男ふたりが少女を取り合っての三角関係が始まるのだが……。 Le-souffle-la-critique_article_landscape_pm_v8

 雄大な草原の風景はそれだけでも美しい。そこに真っ赤な太陽が昇り、やがて沈んでいく。そういう自然のなかで飛行機乗りだったらしい親父と美しい少女の生活が描かれていく。多分それだけだったらもっと牧歌的な映画になっていただろうと思うのだけれど、この作品には少女を演じたエレーナ・アンのただならぬ存在感がある。

 エレーナ・アンはモスクワに住むロシア人と韓国人のハーフとのこと。この役柄は撮影当時14歳という微妙な年齢だからこそできた役だろう。作品のなかのエレーナ・アンは少女のようにも大人の女性のようにも見える。モンゴリアンのようにも見えるし、ロシア系の雰囲気もある。その笑顔は無邪気のようでもあり、男たちをもてあそぶような匂いもかすかに感じられる。瞳には強い意志を示す瞬間があるかと思えば、妙に儚げな表情を見せたりもする。とにかくその存在じたいに魅了されたのだ。

 この映画はもともとは台詞がある設定だったのだとか。しかし、この完成したバージョンにはまったく台詞がない。監督のアレクサンドル・コットはエレーナ・アンに惚れ込んでヘタな演技をさせるより、ただ草原のなかに美少女を立たせてこちらを見つめさせるほうを選んだのだろう(多分それは大成功だったと思う)。

 映画の設定すら変えさせてしまった美少女は確かにとても存在感があって、エレーナ・アンを見ているだけで満たされた気持ちになる1本だった。『草原の実験』という題名にある“実験”というのはカザフスタンであった実際の出来事らしいのだけれど、衝撃的なラストよりもぼくにはエレーナ・アンの姿ばかりが目に焼きついて離れなかった。


 ↓ こちらは舞台挨拶に来たときのものらしい

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 この映画とはまったく関係ないけれど、台詞がない映画でとてもヒロインが素敵だった作品として『ツバル』を思い出した(どことなくコミカルな部分があるところも似ている)。『ツバル』のチュルパン・ハマートヴァはこの映画のエレーナ・アンほど美形ではないけれど、とても表情豊かでかわいらしかった。



『ルーム』 アカデミー賞主演女優賞受賞作だが

 小さな部屋に母親と子供が暮らしている。天窓がひとつあるだけで外は空しか見えない。子供は髪が長いが実は男の子で、その部屋以外の世界はないものと考えている。テレビはあるのだけれど、テレビは偽物の世界であり、本当の世界は小さな部屋だけと信じている。

 実はこの部屋は母親であるジョイ(ブリー・ラーソン)が監禁されている場所なのだ。夜になるとやってくる男がジョイを突然誘拐し、それから生まれた子供がジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)なのだ。

 日本ではちょっと前に似たような事件があり、犯人も逮捕されたことからなかなかタイムリーな映画となった。

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 こうした映画では囚われの女性が脱出するところが山場となり、家族と再会したところで大団円を迎えるというのが普通だと思うが、この映画はその先を描いている。家族のもとに帰って社会復帰するところにこそ本当の闘いが待っているというあたりはとてもリアリティがある。実際に映画ではジョイの父親は、娘を誘拐した犯人の息子でもあるジャックを受け入れることができないわけで、そうした厄介な問題を多く孕んでいる。

 けれども色々と盛り込みすぎた感じもある。小さな部屋だけの世界の描写、それから脱出のサスペンスがあり、さらに社会に戻ってからの新たな闘いがある。家族と再会する場面などは泣かせるのだけれど、立ち直りまでに至るところはそれほど説得力があったとは思えなかった。

 母親はジャックがゾンビ状態と呼ぶところの鬱になるときがあって、それも理解できるほど色々と問題を抱えているわけで、最後は前向きで頑張ろうといった終わり方だったところが妙にリアリティを欠いている気がした(多分そうしないと劇映画としては終われないんだろうけど)。

 

 『ショート・ターム』で有名になったブリー・ラーソンは、この作品でアカデミー賞主演女優賞を獲得したけれど、圧倒的にいいとは思えなかった。同じような題材の『白い沈黙』では誘拐された少女が妙にハツラツとしているのが妙だったけれど、『ルーム』のブリー・ラーソンはいかにも疲れた印象で、子供を守るためか表情は仁王のようにこわばっている。誘拐犯のお眼鏡に適う少女なのだから可憐なところがあってもよさそうなのだが、そんな側面は微塵も感じられなかった。母親になってそうしたところは失われたのかもしれないけれど……。

 本当の世界に初めて対面することになるジャックを演じたジェイコブ・トレンブレイはとてもかわいらしくてよかったと思う。


『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』 エミリー・ブラウニングが妙に気になる

 人気バンド、Belle and Sebastianスチュアート・マードックが、ソロアルバムを映画化したミュージカルとのこと。

 イヴという拒食症の女の子が主人公(エミリー・ブラウニング)。やがてイヴはジェームズ(オリー・アレクサンデル)とキャシー(ハンナ・マリー)という女の子と一緒にバンドを結成することになる。

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 ぼく自身はどちらかと言えば野暮ったいハードロックなんかを聴いていた世代で、映画で言えば『ロック・オブ・エイジズ』なんかがとてもぴったりとくる感じなのだけれど、あまりよくは知らないBelle and Sebastianの音楽もとても沁みるものがある。ベスト盤みたいなアルバムは『フルキズ・ソングス』という題名で日本でも発売されていて、どちらかと言えば内向的でナイーヴな感覚の曲が多いのだろうと思う。

 ヴォーカルも務めるスチュアート・マードックのささやくような歌い方も印象的だし、どの曲もとても心地よくて聴けば聴くほど沁みる。この『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』の曲は結構暗い曲も多いのだけれど、ミュージカルということもあって青春映画らしい楽しさもあるし、どの曲もとても心地いい。

 主演のエミリー・ブラウニング『エンジェル・ウォーズ』の主役だった女の子。妙にブサイクに見える瞬間もあるのだけれど、オシャレな衣装の着せ替え人形のように登場するところはかわいらしいし、歌声もとてもいいし個人的にはとても気になる。



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