サイの角のように 独りよがり映画論

映画について自分勝手な感想の備忘録。ネタバレもあり。 ほかのブログから引っ越してきました。

『女が眠る時』 川端康成ほど変態ではなかった

 『スモーク』ウェイン・ワン監督の最新作。原作は海外のものだが、日本を舞台となっていてお馴染みの顔ぶれが登場する。

 健二(西島秀俊)は作家だが次の作品が書けないまま。編集者の妻・綾(小山田サユリ)に連れられてきた伊豆のホテルで健二がのんびりとしていると、親子ほども歳の離れたカップルが目に留まる。男は白い水着を着た若い女にオイルを塗ってやっている。健二は作家としての興味が沸いてふたりを追うことになる。次第にその執着は度を越していき、部屋を覗き見し、さらには部屋に侵入するまでに……。

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 佐原という男(ビートたけし)は美樹(忽那汐里)という女の眠る姿をビデオに撮っている変態オヤジである。川端康成『眠れる美女』を思わせるのだけれど、変態度合いは名高い変態である川端ほどではない。佐原は健二に覗かれていることを知っているし、撮影したビデオを健二に見せたりもするのだが、一緒にビデオを見ているときの佐原の息が荒いのは、健二に見せることで興奮しているというよりも、演じるたけしの肥満度合いのがそうさせているだけに見える。もっと変態度合いを深めてもよかったように思う。

 忽那汐里はそれなりに魅力的だけれど『黒衣の刺客』ほどではないし、しゃべり出すとひどくバカな女に見えてしまうのが残念なところだろうか。ベッドにシャツだけで横たわり佐原に撮影されたり、下着姿にまではなったりするもののギリギリのところは守っている。

 一方で妻の綾を演じた小山田サユリは、健二を演じる西島秀俊の鍛えられた身体に裸で跨って、股間に手を入れたりしてサービス満点である。一部の解釈では綾がすべてをセッティングしていたという説もあるようだ。次の作品が書けない夫にインスピレーションを与えるため怪しげな男女を用意して覗きをさせ、妻の浮気まで疑わせることで作家である夫を揺さぶって書くべき題材を与えようとしていたという……。たしかにそんなふうに解釈できなくもない。ただ、それだったら健二の知らないところで綾の笑みを観客に見せたりしそうな気もするからちょっと違うかもしれない。

 どこまでが現実でどこまでが作家の妄想なのかは明らかではないけれど、こんな妄想が次作になったとすると小説家としての健二の将来はあやしい気がする。


『シェル・コレクター』 前衛的なのはともかくとして橋本愛を

 盲目の貝類学者(リリー・フランキー)は沖縄の孤島で貝を収集する日々を過ごしている。ラジオから聞こえてくる世界の様子は終末へ向かっているようにも感じられるが、その島は美しい海と静かな生活があった。そんなときひとりの女が島に漂流してくる。いづみという女は世の中で流行り出している奇病に侵されているのだが、貝類学者が見つけてきたイモ貝という貝の毒にやられて病を完治する。するとその噂を聞きつけた奇病の患者たちが島にやってくるようになって……。

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 世界は不思議に満ちている。貝類は昆虫類に次ぐ種類を持つそうだが、どうしてそんな様々な形態を持つのか誰にもわからない。海の底のサンゴの美しさとか、巻貝のらせん形状とか世界には謎ばかり。この映画も謎を謎として提示しているようで前衛的なものを感じさせる。昔観た『アンモナイトのささやきを聞いた』という作品を思い出した。

 寺島しのぶ演じるいづみは貝の毒にやられると死に掛かって走馬灯というか何かしらの幻影を見る。その何だかよくわからない幻影の描写がとてもひとりよがりなものに感じられた。何だかわからないけれどスゴイだろみたいな感じだろうか。その押し付けがましさはいづみが貝類学者の押しかけ女房として振舞う感じともよく似ているような……。

 個人的にはお気に入りの橋本愛が巫女さんのような雰囲気で登場するところが眼福で、それだけでも観る価値はあるとは思うが、全体的には前衛風味が鼻についた。


『ベルファスト71』 住宅街という戦場

 ロッテン・トマトで97%という満足度をたたき出した作品。

 監督はこの作品がデビュー作となるヤン・ドマンジュ

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 1971年のベルファスト。アイルランドのプロテスタントとカトリックの対立はこれまでも色々な映画が取り上げてきた題材だが、この作品はそんな戦場の場所に取り残されてしまったイギリス軍の一兵士のサバイバル・ドラマとなっている。99分があっという間という感じだった。

 住民を安心させるという名目でヘルメットや盾もなしでベルファストの中心地に降り立つイギリス軍。占領されたと感じている住民たちは彼らに非難の声を浴びせる。そうこうしているうちに暴動へと発展し、ゲイリー(ジャック・オコンネル)は住民のなかに取り残され同僚の兵士は住民のひとりに銃殺される。

 スピーディーな追いかけっこから始まって、暴動が起きた夜をこっそり逃げ回るサスペンス、IRA内部の抗争なんかにも巻き込まれて両方から命を狙われる始末でとにかくハラハラとさせる映画だった。

 イギリス軍の上層部は平服でスパイみたいなことをしていて、IRA穏健派とつながって様々な策を練っている。IRAの過激な活動をしている暫定派のひとりを逃がしていることからもイギリスが裏で紛争を操っているらしいことも見て取れる。大国のやりたい放題は恐ろしいものがある。

 同じ時期にDVDがリリースされた『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』でも、この作品と同じように「デヴィッド・ボウイは女の子向け」という台詞があるのがおもしろい。向こうのイメージでは女の子向けという印象なんだろうか。

『ソレダケ/that's it』 石井岳龍の爆音ムービー

 石井聰亙改め石井岳龍監督の最新作。

 『狂い咲きサンダーロード』の系列のハイ・テンションな話で楽しめた。出演陣も意外に豪華で、日本映画の旬な人材が顔を揃えていると思う。

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 『生きてるものはいないのか』の主役だった染谷将太と、『シャニダールの花』の主役だった綾野剛が、物語のなかで対立する大黒砂真男(染谷)と謎の極悪ギャングのボス千手完(綾野)をそれぞれ演じている。染谷の役柄は髪型とか車イスに乗るところが『ストレイヤーズ・クロニクル』の役を思わせてしまうのが難点かもしれないが、綾野剛はそれほど出番は多くないけれどカッコよく決めている。そのほか渋川清彦村上淳なんかも絡んできて、なかなか騒がしい。白黒で始まった映画が次第に色を持ち始め、最後はマンガチックな対決へと向かっていく。

 吉村秀樹率いるロックバンド「ブッチャーズ」の爆音ロックが響き渡り、作品の激しいイメージを決定づけている。『生きてるものはいないのか』でもノイジーな音楽が印象的だったのだけれど、『ソレダケ/that's itの「ブッチャーズ」の爆音もクセになる。「ブッチャーズ」のボーカル吉村秀樹は亡くなってしまったらしいのだが、この作品は「ブッチャーズ」の楽曲が着想を得て作られたものだとか。

 紅一点の水野絵梨奈は元E-girlsなんだとか。アイドルみたいにかわいらしく見せようとしてないあたりは好感が持てたと思う。染谷とふたりで歩いてくる場面に育ちの悪さみたいなものすら感じられたのがよかった(もちろん役柄上のことだが)。どこか池脇千鶴っぽく見える瞬間もあり。

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『ブラック・スキャンダル』 ジョニー・デップの最新キャラ

 ジョニー・デップの最新作。いつもみたいな派手なキャラではないわけだけれど、ハゲづらというコスプレを楽しんでいるようなところもあり。本当のジョニー・デップの姿はどんなものだったのかもはやわからなくなってくる。

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 実在のジェームズ・ホワイティ・バルジャーというアイリッシュ・マフィアの一代記。

 施設で育った子供たちが長じてマフィアになり、FBIになり、政治家になる。彼らにとっては仕事よりも幼いころからの仲間への忠誠心のほうが大きい。FBIとなったコノリー(ジョエル・エドガートン)は地域にのさばるイタリアン・マフィアを潰すために、ジミー・バルジャー(ジョニー・デップ)を情報屋として利用することを提案する。そしてその代わりにジミーはFBIからお墨付きを与えられどんどん調子に乗っていく。

 なぜこの人物が映画の題材になったのかがよくわからない。あまり魅力的な人物ではないからだ。最後にジミーに対しての人物評として挙げられるのは「根っからの殺人者」というもので(「単なるの殺人者」だったかも)、かといって震えがくるほど恐ろしいキャラでもない。裏切り者は許さねえと言いつつ、自分はFBIとつるんでいることからもわかるように支離滅裂なのだ。子供には「暴力を振るうなら誰も見ていないところで」、と言いふくめていたのにジミーはどんどん大胆になり、白昼堂々と殺人を犯すようにもなる。

 いろんな顔を揃えてみましたという感じのところはおもしろかったが、それだけだったようにも思えた。ジミーの弟役のベネディクト・カンバーバッチは政治家役だけに出番は少ない。マフィアが政治家と仲がいいなんてことはさすがに描きづらいのか。とりあえずは事実をもとにしているとのことで、ドラマティックなものが感じられなかった。


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