サイの角のように 独りよがり映画論

映画について自分勝手な感想の備忘録。ネタバレもあり。 ほかのブログから引っ越してきました。

『龍三と七人の子分たち』 ヤクザも今はつらいよ

 北野武監督の最新作。昨年劇場公開され、今月になってDVDが登場した。

 『アウトレイジ』シリーズではハードなヤクザものをやっていた北野武だが、今回はちょっと力の抜けた感じのコメディだ。ヤクザ稼業なんて今どき流行らないわけで、昨今の厳しさを増す暴対法だとか、暴力団よりもタチが悪い半グレ勢力なんかも登場する現代のヤクザものとなっている。

 主人公の龍三(藤竜也)からしてもうヤクザは引退していて、家では息子から邪魔者扱いされているかわいそうなおじいちゃんといった感じ。息子はカタギの人間で、家では肩身が狭い思いをしているのだ。背中の龍の刺青は未だに消えないけれど、肩で風を切っていたあのころはよかったと仲間と愚痴り合うといった日々。近頃、目に余る京浜連合という半端者たちに対抗するために昔の仲間たちが集まって新しい組を設立することになる。

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 それほどテンポがいいわけではないし、『アウトレイジ』のようなカッコよさもないのだけれど、この作品で北野監督がやろうとしているのは漫才みたいなものなのだろうと思う。詰めた指のせいで色々と騒動が生じたり、組設立の挨拶に行けば、よくあるヤクザの口上にはいちいち相手からツッコミが飛んでくる。一番おかしいのは途中でくたばって死に装束のまま襲撃に付き合わされるモキチ(中尾彬)に対する虐待だろう。死人に鞭打つなんてものじゃないひどい仕打ちなのだけれどもついつい笑ってしまう。

 それから飛行機での自爆テロは途中で攻撃対象をアメリカに移すわけだけれど、多分、北野監督は本当はそのまま航空母艦に突っ込ませたかったのだろうと思う(モキチなめの空のカットがよかった)。さずがにそれではと周囲から止められたのだろうが、北野武の毒が出ていて笑える作品だったと思う。


『私の少女』 ペ・ドゥナ主演のきわどい話

 海辺の小さな村にペ・ドゥナ演じる警察官ヨンナムが所長として赴任してくる。狭い村のなかで少女ドヒ(キム・セロン)がいじめを受け、家庭でも虐待を受けていることが明らかになる。このあたりの展開は同じ韓国映画の『トガニ』を思わせる。実話を元にしたという『トガニ』は本当に信じられないくらい酷い話だったけれど、こちらもなかなかきわどい作品になっている。

 ドヒは家庭で虐待を受けているけれど、その家族とは血がつながっていない。そんなわけでドヒには味方がまったくいないわけで、たまたま助けてくれたヨンナムは警察所長という権力の持ち主であるし、それに頼るのは当然だったかもしれない。家族から守るために自分の家にドヒをかくまうことにするヨンナムだが、彼女もまた問題を抱えている。

 

 ※ 以下、ネタバレあり!


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 中盤にヨンナムを訪ねてくる女性が現れる。当然観客としてはドヒの母親だろうと推測するのだけれど、実はその女性はヨンナムの元彼女ということが明らかになる。実はヨンナムは同性愛者でそのことが原因で田舎に左遷されてきたのだ。そんなわけでヨンナムはミネラルウォーターみたいに偽装した焼酎を手放すことができないくらいに病んでいる。

 レズビアンの女性が成長著しい中学生を囲っているということになると、その雰囲気もちょっと違ってくる。バスルームでふたりが裸になる場面はそれほど露出はないけれど、かなりきわどいシーンになっていると思う。だってレズビアンと胸が大きくなりかけの少女なのだから……。

 この映画はさらにドヒが単なるいじめられっ子ではなく、狡猾な企みを持つ危険な女へと変貌していくところを描いている。「虐待なんかさせてはいけない」とドヒをそちらの方向へと導いてしまったのはヨンナムなのかもしれないけれど、ドヒはちょっと怖いところもある。

 ドヒは演じているのは『アジョシ』でウォンビンと共演していたキム・セロンとのことで、あれから比べると大きくなったなあと感慨深い。そしてそれを見守るペ・ドゥナ『クラウドアトラス』『ジュピター』はいいところがなかったけれど、この映画では出ずっぱりで見どころ満載だと思う。あまり美人さんというわけではないのだけれど、妙に気になるところがある女優さんだ。


『逢いびき』 ベタなメロドラマだけれどつつましさがいい?

 『マリアの乳房』『妻が恋した夏』『愛の果実』などのラブストーリーズの1本。借りようかと思ってレンタル店で探すと結構借りられていたりして、今ごろになってしまったから意外に人気があるのかもしれない。何と言ってもこのシリーズはロマンポルノみたいにエロが込みとなっているわけで、やっぱりエロは根強い人気があるのだろう思う。この弱小ブログでもお客さんが多かったりするのは、このラブストーリーズのシリーズだったりもする。

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 主演の丸純子90年代にはテレビでレポーターなどをしていた人とのこと。お上品な印象で、あまり若くはないのだけれどとても可愛らしい印象。相手役の二枚目・赤木伸輔は、小嶺麗奈がキレイだった『水の中の八月』に出ていた人(そのときは青木伸輔)。

 物語としてはベタな昼メロといった感じ。互いに配偶者を持つ身でありながら、出遭ってしまったふたりが不倫の恋に走ってしまうのだが、なかなか一線を越えないのが慎ましい。世間では不倫なんてそれほど珍しくもなさそうだけれど、やはり後ろめたさがあるということなのだろうか。というよりもメロドラマとしては、そこでの葛藤こそがミソということのなのかもしれない。

 とはいえもちろんベッドシーンもある。色白の肌の豊かな胸は服の上からも窺えるのだけれど、ベッドシーンまでにはいくつもの躊躇を経なければ辿りつかない。いざというときになってからもさらに迷ってしまうところが奥ゆかしくていい? 抱き合いつつも醒めているなんて『男と女』あたりを思わせなくもない。

『私たちのハァハァ』 女子高生の青春に怖いものはない

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 『自分の事ばかりで情けなくなるよ』クリープハイプの尾崎世界観とコラボレートしていた松居大悟監督の最新作は、クリープハイプのファンの女の子たちが主人公。クリープハイプに「東京のライヴも」と誘われたから実際に行くことにしたという無鉄砲な4人組。女子高生たちが自転車で北九州から東京までを疾走するというロードムービーだ。

 松居大悟監督は『スイートプールサイド』以来気になっていて、『ワンダフルワールドエンド』もとてもよかったので、これまでの作品はすべて観てみた。ちょっと前に出た本『さあハイヒール折れろ』なんかも読んでみたのだが、どうやら松居監督の映画の主人公は監督本人によく似ている(原作が別にある場合もあるけれど)。

 上記の著作(ネットで連載していたもので、こちらでも読める)によれば、松居監督はまさに『アフロ田中』みたいな童貞キャラをネタにしていた模様。結局、その本の最後の対談では童貞は卒業してしまったことも明らかにされているのだが、だからなのかどうかわからないけれど『私たちのハァハァ』は意外にもまっとうな青春映画になっている。言い換えれば童貞のこじらせ感がなく、真っ直ぐな女子高生の青春物になっているのだ。

 主役の4人は皆それぞれにキャラが立っていてよかったと思う。上のスチールの向かって左から紹介すると、大関れいかは6秒動画とかで人気とかでこの映画でもカメラ慣れしている印象でおもしろい存在。井上苑子はちょっと不良っぽい外見だけれど、声がかわいらしい(実際にシンガーソングライターだとか)。真山朔は一番普通の女子高生らしくてとてもかわいい(ちょっと夏帆っぽく見える瞬間も)。三浦透子は唯一演技経験があるとのことで、クリープハイプにはまってちょっと狂気に陥る難しい役どころを演じている。最初は自分たちのカメラで旅を撮影しているという設定になっているからか、ごく自然な4人の旅の様子が捉えられていたと思う。

 『自分の事ばかりで情けなくなるよ』では第2話のクリープハイプのアンコールに間に合って涙するOLのエピソードが良かったのだが、『私たちのハァハァ』もそれに似た場面もある。ただ結末はちょっと違う。やはり青春ってそんなものだよねというところだろうか。

『EDEN/エデン』 幻の鳥の行方は?

 90年代から00年代にかけてのフランスのダンス・ミュージック・シーンが題材となっている。フランスの音楽が流行っていたことすら知らないし、クラブなんかにも出入りしないぼくにはまったくこの映画を語る資格がないのかもしれない。ただミア・ハンセン=ラブ監督の評判(未見だが前作『グッバイ・ファーストラブ』がとてもいいのだとか)を聞いて観に行った。

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 名前くらいは聞いたことがあるダフト・パンクが登場するものだから、チアーズというDJコンビも有名な存在なのかと思ってしまったのだが、そうでもないようだ(チアーズは実在したようだが、多分知る人ぞ知るというような存在なのだろうと思う)。そんなだから主人公のポール(フェリックス・ド・ジヴリ)が神様などと呼ぶ人物が登場しても、それが現実の大物のことを指していて歴史的な瞬間を示しているのか、単なる成功へのエピソードのひとつなのかがわからずにちょっと困った。

 そんな疎い人が見ると、この作品は意外と淡々と進行していくように見える(よく知っている人が見ると違うのかもしれないが)。ただつまらなくはない。もちろんそれは音楽的な良さもあるのかもしれないけれど、第2部に入ってからのほろ苦い感じがとてもよかったのだ。

 ダフト・パンクが数少ない成功者だとしても、ほかには星の数ほど挫折していく人たちがいるわけで、チアーズもそこそこ成功はするもののダフト・パンクにはなれない数多くのほうになることになる。そのなかには夢破れてというかほとんど自滅していくように自殺してしまう人がいたりもするし、ポール自身も借金とドラッグでにっちもさっちもいかない状態になる。

 数多い恋人たちが登場するが、そのなかでも一番重要なルイーズも主人公を捨てて日常生活へと戻っていくわけだが、ポールはいつまでもモラトリアムを抜け出せないあたりが身に染みる。冒頭でアニメで描かれるカラフルな鳥が登場するのだが、それは二度と姿を現さない。ポールが追っていたのはそんな幻の鳥の姿ということだろうか? DJの夢をあきらめた後でダフト・パンクの曲(Within)がかかるシーンがとても印象に残る。

 

 ポールの恋人役には『フランシス・ハ』グレタ・ガーウィグとか、名前もない小さな役柄でもかわいらしいフランス娘たちが登場する。それでもやはりルイーズを演じたポーリーヌ・エチエンヌが一番好み。20年に渡る物語の最初から最後まで登場していろんな姿を見せてくれる。



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