フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』の5度目の映画化。ちなみに日本語訳もしている村上春樹は、人生で出会ったもっとも重要な本として『グレート・ギャツビー』を挙げている。そのくらいの名作だ。
 今回は3D版もあるが、2D版で鑑賞。ラストでギャツビーがプールに浮かぶ場面では、『ライフ・オブ・パイ』のような奥行きのある構図が見られるが、全体的には2Dで充分な気がする。まあ、ギャツビー邸のパーティを体感できるという点では3Dもいいのかもしれないけど。

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 今回の『華麗なるギャツビー』ディカプリオが演じるギャツビーは人間味がある。74年のレッドフォード版のギャツビーはあまりに完璧すぎて付け入る隙がない気がしたが、こちらのギャツビーには親近感が湧く。「お茶会」のシーンでは、謎多き大富豪であるギャツビーがかつての恋人を前に慌てたりして挙動不審になるのがいい。舞台設定は華麗だけれども、結局はラブ・ストーリーと言ってもいい映画なのだ。
 デイジーを演じたキャリー・マリガンもかわいらしくてよかった。『ドライヴ』などでは庶民的な印象だったが、高級ブランドのドレスもよく似合う。ただ如何せん人の良さがでてしまうのか、デイジーというキャラクターの愚かさは感じられなかった。デイジーは自分でも「女の子はかわいらしいお馬鹿さんがいい」と語っているのだ。
 キャリー・マリガンは『SHAME』では、セックス狂みたいな主役マイケル・ファスベンダーのちょっとイタイ感じの妹を演じ、意外にぽっちゃりとした裸体も披露していて、こちらのほうが馬鹿な女の子らしかった。『華麗なるギャツビー』では馬鹿というよりは、かよわい印象。

 監督バズ・ラーマン『ムーラン・ルージュ』で有名だが、この『華麗なるギャツビー』でもド派手なパーティ演出を見せてくれる。ただ文学作品の映画化だからか、それほど弾けた感はない。またラーマン流のぶっ飛んだミュージカルを観たいものだ。