『マトリック』シリーズのウォシャウスキー姉弟と『ラン・ローラ・ラン』『パフューム ある人殺しの物語』のトム・ティクヴァが共同で監督。出演はトム・ハンクスハル・ベリーペ・ドゥナなど。
 19世紀から文明が崩壊して地球を脱出するまでの物語。6つの時代のエピソードを同時並行的に描くという実験的な作品。われわれ観客はわけもわからずにそれらを観ていくしかないが、それが退屈にならないところはさすがにハリウッド製エンターテインメント。約3時間の長丁場だが一気に見せる。

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 しかし、終わってから冷静に考えてみるとよくわからないことも多い。『クラウド・アトラス』では、たとえばトム・ハンクスは6つの時代すべてに登場するわけだが、それによって物語に何らかの影響があるのかと言えば、そうとも思えない。
 トム・ハンクスの演じるのは、輪廻転生によって生まれ変わっていく魂みたいなものなわけで(肉親関係だから顔が似ているというわけではない)、輪廻という考え方はこの映画では重要な位置を占めている。それにも関わらず、なぜか輪廻が物語全体に大きな影響を与えないというのが不思議なところか。エピソードを結びつけているのは、文学・音楽・映画などの芸術や宗教などなのだ(あるいはシチューエションの類似性から無理やり結び付けたりもするが)。
 そうした各エピソードを結びつけるものに関わる人には、この映画ではほうき星型のあざが付けられている。それらは各エピソードの主役だが、まったく関係のない6人だ。三島由紀夫『豊饒の海』などでも、輪廻する対象にはわかりやすいマークが付けられるが、この映画ではまったく関係ない人物にマークが付けられているから、かえって混乱するような……。もしかすると神の御意志に導かれた人物が、ほうき星型のあざを背負っているということなのかもしれない。そうだとしたら、地球崩壊に至るのも神の御意志ということになり、この映画はノアの箱舟の再現みたいな話とも言えるのかもしれない。

 無表情なクローンを演じたペ・ドゥナは、出演シーンが多いわけではないが今回も何故だか印象に残る。個人的には『ムーラン・ルージュ』でジドラー役を演じていたジム・ブロードベントが大きな役(2012年の老編集長役や1931年の大作曲家役)として登場していたのが嬉しかった。