橋本愛主演のミステリー。ピアニストを目指す遥(橋本愛)とルシア(相楽樹)は仲の良いいとこ同士。親を亡くしたルシアは遥と姉妹のように暮らしていたが、ある日火事が起きて片方が焼け死んでしまう。

 この先、ネタバレもあり(あまり関係ないとは思うけど)

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 原作は『このミステリーがすごい!』の大賞受賞作とのこと。つまりミステリーとして読まれているはずだ。しかし映画版においてはその謎は陳腐なものに成り下がっている。
 この映画『さよならドビュッシー』がミステリーとして成立していないのは、映画というジャンルの性質上仕方ないことなのだろうと思う。原作小説では文章だから謎として成立するアイディアも、俳優が現実に演じている映画となるとそうはいかないからだ。遥とルシアのふたりのうち火事で助かったのはひとりだけ、生き延びたひとりも全身やけどで顔にも整形を施して元に戻したとなれば、だいたい謎となるものの見当はつく。
 だから、全身包帯で現れた生き残った片一方はまったくの橋本愛の顔だけれど、『私が、生きる肌』みたいな様子で登場するものご愛敬だ(同じ整形ものの『私が、生きる肌』にはびっくりしたが……)。だからそんな謎よりも遥=ルシアの成長物語として、あるいは音楽ものの青春映画として楽しめばいいと思う。

 遥にピアノを教える岬洋介は『のだめカンタービレ』などでピアノの吹き替えをしていたというピアニスト清塚信也。演奏するピアノがうまいのは当然だけれど、いかにも音楽家といった風貌も映画に合っていた。いつも無表情な印象の橋本愛も、整形したばかりという設定もあってその無表情にも理由があるし、雨のなかで自分がルシアであると告白する場面なんかは真に迫っていたと思う。知らぬ間に別人として生きることになってしまったルシアの想いにも泣かされる。