『第9地区』ニール・ブロムカンプ監督の最新作。前作の大成功を受けて、マット・デイモンとジョディ・フォスターというスターを擁したSF大作となったのが『エリジウム』だ。
 この映画では、地球は荒廃してスラム化しているが、一部の富裕層だけが上空に浮かぶスペースコロニー“エリジウム”において豊かな生活をしている。最近の映画では『タイム/TIME』が似たような設定だったが、これも格差社会を扱ったSFの王道路線だ。

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 『第9地区』では地球に不時着してスラムに隔離されるエビ型エイリアンは、ブロムカンプの出身である南アフリカのアパルトヘイトで虐げられる黒人を表現していた。今回の『エリジウム』でもそうした社会批判的な視点は活きている。ごく一部の富裕層とその他大勢の貧困層は分断され、貧困層には空に浮かぶ“エリジウム”の幽かな姿に憧れるものの、そこにたどり着く具体的な手段は何もない。“エリジウム”では最新鋭の医療ポッドが存在し、ガンなど不治の病もなくなり、ほとんど永遠の命を手にすることができる。しかしそれは“エリジウム”に居住することが許可された一部の市民だけの特権であり、地上のスラムに生きるその他大勢の人間は目に見える不公平を甘受しなければならない。
 監督によれば、こうした不公平は現実の姿を写したものだ。映画に描かれた“エリジウム”というユートピアと、スラム化した地球というディストピアは現実世界そのものなのだ。

 とは言えブロムカンプ監督は社会批判をすることが目的ではないだろう。『第9地区』ではロボットバトルを見せてくれたが、今回はパワードスーツを身にまとった肉弾戦を見せてくれる。オタク的感性を刺激する様々なガジェット(ドロイドとかパワードスーツとか)が登場する。こっちのほうがビジュアル・アーティストを自認する監督の本領なのかもしれない。敵役がなぜか日本刀を用い、“エリジウム”のなかには桜の木があり、戦闘シーンでは桜の花びらが舞い散るなど、どこか日本びいきなシーンもある。
 ただ王道SFを目指した分、やはり『第9地区』ほどの驚きはなかったというのが正直なところか。スキンヘッドにしてちょっとゴリラっぽさが増したマット・デイモンは頑張っているが、ジョディ・フォスターはあっけない。もっといやらしい悪役が見たかったが……。