スサンネ・ビア監督の映画は、いつも結構シビアな問題を扱って、観ている人を倫理的な問題に巻き込んでいくような印象がある。たとえば『ある愛の風景』は悲惨な戦争から帰還した兵士が、平和な日常へ戻ってくることで起きるいざこざが描かれていた。この映画はその問題提起の鋭さと後半のサイコ・サスペンスなタッチがよかったのか、ハリウッドでもリメイクされた(『マイ・ブラザー』がリメイク作品だが、残念ながら未見)。
 今回の『愛さえあれば』も、乳癌にかかって夫には浮気された中年女性というところはシビアだが、シリアスさは幾分か薄れて、大人の恋愛ものとして楽しめる内容になっている。

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 ちなみに恋のお相手は元007のピアース・ブロスナンで、ちょっと歳を重ねた感じはするが、相変わらずの二枚目ぶりを見せている。この大人の恋愛のきっかけとして登場するその子どもたちのふたりも、初々しくてよかった。金髪碧眼で透き通るような白肌という、いかにも北欧美女といった感じのモリー・ブリキスト・エゲリンドが華麗だった(ちょっとユマ・サーマンあたりに似ている)。

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 『愛さえあれば』は、宣伝ではコメディといった印象で売られている。しかし、ほかの作品よりはユーモアはあるけれど、喜劇という枠に囚われているわけではないし、ラブ・ストーリーというには現実的だ。何と言っても、主役の中年女性(トリーヌ・ディルホム)は薬の副作用で丸坊主だし、ロマンチックに浸るにはちょっと夢がなさすぎるからだ。このあたりの主人公の描き方は、女性監督ならではという感じがする。それでも坊主頭に金髪ストレートのウィッグをつけて頑張る姿は微笑ましい。冴えない中年女性だった主人公が最後にはちょっと素敵な存在に見えてくる。