『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』(1995)『ビフォア・サンセット』(2004)に続く第3作目。前作からさらに9年後、出会ったときから18年を経たジェシー(イーサン・ホーク)とセリーヌ(ジュリー・デルピー)の姿が描かれる。前作の終りではふたりのその後を様々に推測させる形で終わったわけだけれど、今回もそれをしっかり受けての続編となる。

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※ ネタバレあり。

 今回の『ビフォア・ミッドナイト』でのふたりの関係は、ロマンスからはほど遠い。それは前作の再会のあと、ふたりは結婚しなくとも双子の娘の親というパートナーとして、9年間も生活を共にしてきたからだろう。長らく連れだった阿吽の呼吸も感じられ、毎回のことだが饒舌なおしゃべりは留まるところを知らない。ただ話題はきわめて日常的なもので、所々にはけんかの種もある。夢や希望の時代は終わって、ひどく現実的なのだ。
 そんなバカンスの長い1日が描かれるわけだが、今回はギリシャの風景をバックにふたりは語り続け、ようやくホテルに辿り着いてベッドに向かったときは、映画自体が前戯みたいなものだったのかと思った。
 そこからベッドシーンが始まるが、彼らはすでに40代で、しかも9年も連れ添っている。その歳でいまだにロマンスの魔法が続くなんてあり得ないようだ。突然の電話もあって、セリーヌのはだけた胸も、ジェシーが脱いだズボンも結局は無駄になる。電話をきっかけにして喧嘩が持ち上がってしまうからだ。ふたりの言葉の応酬はそれぞれに言い分があるのだろうし、同じ世代の人間としてはどちらにも共感できた。とりあえず今回の喧嘩は収まったけれど、この先はどうなるのか? 続編にも期待したい。

 ジェシーが書く小説のように、時間や人生、そして男と女についての様々な会話に溢れた映画だった。それにしても時の流れは早いもので、ジュリー・デルピーが胸もあらわに堂々と部屋のなかをうろつく姿にも唖然としたけれど、前作ではあれだけ細身だったのに今回はかなりぽっちゃりしていて、そこに一番驚いた。