『ランナウェイ/逃亡者』などでアメリカでは注目されているというブリット・マーリングが主演・脚本を手掛けた作品。監督はザル・バトマングリッジ。そのほかの出演にはエレン・ペイジアレキサンダー・スカルスガルドなど。

poster2.jpg

 主人公のサラ(ブリット・マーリング)は元FBIだが、現在はスパイ活動を行う民間企業に勤めている。アメリカではこんな業界すらも民間が参入するらしい。サラは過激な環境テロを行う「ザ・イースト」という組織に潜り込む。目的はクライアント企業を「ザ・イースト」のテロから守るためであり、「ザ・イースト」そのものを潰すことに主眼はないらしい。
 「ザ・イースト」という組織は、環境汚染や薬害など、社会に対する害悪を撒き散らす企業に対して鉄槌を下す。重油流出なら企業トップの家を重油まみれにするし、重大な副作用がある薬を販売する製薬会社の役員たちにはその薬を飲ませる。サラはテロを防ぐという正義と、企業の論理との間で板ばさみになる。そして彼らと一緒に生活していくことで、「ザ・イースト」の思想そのものに感化されてもいく。

 「ザ・イースト」の組織は、テロリスト集団というよりはカルト的な雰囲気。サラが初めて組織に潜り込んだ日の夕食は、一種の儀式となっており、全員が拘束着で食事をする。手を使えない状態でどうやってスープを飲むのか? サラはためらった末に犬のように皿に顔を突っ込むが、正解は違う。口でスプーンをくわえ、隣の人に自分の皿からスープを差し出すのだ。自分のスープは他人に、他人のスープは自分に分け与えられる。こうした思想の下では、企業が資本力に任せて環境を破壊したり、病人を食い物にして稼いだりするのは許せないということなのだ。

 町山智浩が言うには、この『ザ・イースト』で描かれていることは実際にあることなのだとか。薬害のエピソードが登場するが、飲んだだけで脳に障害が発生するような危険物を薬として平気で販売してしまう企業というのは恐ろしい。
 そうした事実は興味深いし、サラの葛藤もテーマとしてはいいのだけれど、主人公のキャラが有能すぎてマンガチックだし、男前のリーダーと寝てしまったりするのは、主演のブリット・マーリングが脚本も書いているからだろうか。ラストも妙に理想論過ぎる気がした。