最近では『その夜の侍』とか『ジ、エクストリーム、スキヤキ』あたりも演劇界の人材が作った映画だったが、この『愛の渦』も劇団「ポツドール」の三浦大輔が、岸田國士戯曲賞を受賞した戯曲を自身で監督した映画だ。出演には池松壮亮、門脇麦、新井浩文、柄本時生、窪塚洋介など。

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 “着衣時間はわずか18分半”という惹句に騙されるつもりで劇場に行ってみると、やはり騙された感はあるのだけれど、それはそれとして、それほどエロくはなくても映画としては楽しめた。服は当然脱ぐわけだけれど、バスタオルを羽織っているシーンのほうが長く、セックスシーンもあるけれど、ボカシが必要なほどではないし、「乱交パーティ」と言っても、そんなにグロい感じもない。女性客が結構多かったのも、「乱交パーティ」というきわどい題材を扱いながらも、到底ついていけないほど突き抜けてないのがよかったのかもしれない。

 ※ 以下、ネタバレも含みます。

 「乱交パーティ」だから当然、やりたい人たちが集まってくるわけで、どんな酒池肉林の地獄絵図のような場面が展開するのかと期待と不安のまま画面を見守っていると、最初のうちは日本人的な場の空気に支配された気まずい時間が続く。じりじりした感じで男女それぞれが相手を見付けていくところは、「乱交パーティ」とは言え、一部の変態だけの遠い世界の話ではないという印象。
 けれども一度はセックスをしてしまうと、急に緊張が解けたように距離感が縮まるようだ。そうなると次第に本性も現れる。保母さんはスケベだとか、実直に見えるサラリーマンがゲスだとか、かわいいOLにはちょっと難点があったり、大人しい女子大生がはげしいあえぎ声を聞かせたりと、意外な面も見えてくるのがおもしろい。裸になって朝まで交われば、通常は見えないようなことも見えてくるわけで、良いところも悪いところもそれなりに明らかになる部分もあり、最後は「乱交パーティ」自体にちょっとした一体感もあったような……。
 物語としては、地味な女子大生(門脇麦)と無口なニート(池松壮亮)との関係に軸があるわけだけれど、それにしても彼ら(彼女ら)は、何故そんなにも性欲に突き動かされているのか? そのあたりはわからないままなのだけれど、熱心なことに人を替えてまで、朝まで何回も闘いを交えるところなど、ちょっと滑稽なくらいだった。

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 地味な女子大生を演じた門脇麦は、東京ガスの「ガスの仮面」というCMに出ている女の子。調べるとチョコラBBなんかのCMにも出ているらしく、この映画とは全然印象が違う。今回は眼鏡におかっぱという暗い感じだったが、大人しいわりに性欲は強いという役柄で、全裸できわどい場面にも挑戦していて頑張っている。