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 今月になってDVDが出たばかりの、非常に珍しいサウジアラビア映画。しかもこの映画はかの国で初めての女性監督(ハイファ・アル=マンスール)が撮った映画だという。イスラム圏の映画を多く観ているわけではないが、最近のアスガー・ファルハディの『別離』などのイラン映画と比較しても、サウジアラビアの社会は女性にとっては生きづらい世界と思える。
 女性は家族以外の男性と会ってはいけないとか、外に出るときは目以外のすべてを隠さねばならないとか、自動車の運転も禁止されているため仕事に行くにも運転手を雇わなければならないなど、とにかく不自由なこと極まりないのだ。

 主人公の少女ワジダはそんな因習的な世界を毛嫌いするわけではないけれど、ラジオではロックを聴くし、黒いケープの下はジーンズとコンバースという出で立ちでしたたかに生きている。欲しいもののためにミサンガを売って金を稼いだり、恋人同士の手紙のやりとりを仰せつかると双方からお駄賃を騙し取るというずる賢さも持っている。
 そんなワジダの今の夢は、仲のいい男の子と自転車で競争すること(自転車ですら女性が乗ることは一般的ではないらしい)。緑色の新品の自転車が空中を飛ぶようにワジダの前を通り過ぎていくところがとてもいい。これは車の荷台に乗せられた自転車が、目の前の壁で下の部分が遮られて飛んでいるように見えるだけなのだが、CGなど使わなくてもちょっとした工夫で幻想的に見せている。少女の憧れの存在である自転車を強く印象付けるシーンだった。
 
 イスラム教の聖典コーランは読み物というよりも朗唱するものらしく、この『少女は自転車にのって』ではワジダがコーランの暗記コンテストでその一部を朗々と謳い上げる様子が描かれている。あまり普段は聴く機会も滅多にないので興味深かった。
 ワジダを演じたワアド・ムハンマドはあまり美人さんではないのだけれど、ラストに自転車で大通りを走り抜けるあたりの笑顔は本当にかわいらしい。