『人のセックスを笑うな』井口奈己監督の作品。タイトル・ロール=ニシノユキヒコには竹野内豊。本日、8月20日からDVDが発売となっている。

04_dsc_0027_large.jpg

 この映画の雰囲気を象徴しているのは、ニシノユキヒコの葬式でかかる音楽なんだろう。調子はずれでグダグダした感じで、どことなくコミカルな印象もある。だいたい白いボルサリーノ・ハットで登場する幽霊というのも滅多にないんじゃないだろうか。
 原作ではニシノユキヒコの過去なんかにも触れられていて、女の子たちはニシノに惚れてはいてもどこかで憐れんでもいるといった感じもあったのだが、映画版のニシノはもっと軽い存在で、その分女の子たちの願望を叶えてしまう幻想的な存在になっている。ニシノを演じた竹野内豊は嫌味もなく、役になりきっていて女性の観客ならばそんなニシノの姿に惚れてしまうかもしれない。
 一方で、ニシノに惚れる7人の女優さんたちも豪華だった。麻生久美子、中村ゆりか、本田翼、尾野真千子、阿川佐和子、成海璃子、木村文乃などそれぞれに個性的で楽しめる。個人的には深みのなさそうな本田翼が好みだが、ニシノと倉庫で何かいいことをしてきたらしき尾野真千子の表情もよかった。
 
 長回しの効果は映画によって様々なのだろうが、井口奈己監督の意図はカメラの前に立たされたふたりの自然な行為を引き出すためのもののようだ。雑誌のインタビューで監督が話していたことには、尾野真千子と竹野内豊のラブシーンでは、台詞もなくイチャイチャするように指示を出し、カットをせずに延々と長回しをしていると、ふたりは予定にはなかったのにキスをしてしまったとのこと。役柄になりきったふたりが誰もいない会社でイチャつくとなれば、そうしたことは自然とも言えるけれど、監督のカットの声はいつまでもかからず、台詞も決まっていない場を持たすために追い詰められた窮余の策としてそんなことになってしまうのだろうとも思う。そのあたりの自然な照れが見え隠れする感じは独特だと思う。中村ゆりかが涙をこぼすシーンもじっくりと見せているが、あれは役柄というより演技者本人が無理に涙を流すところにも見える。そんな意味でこの監督にはサディスティックなところがあるようだ。