監督は『時代屋の女房』『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』などの森崎東。出演は岩松了、赤木春恵、原田貴和子、加瀬亮など。テレビではお馴染みの赤木春恵は意外にも映画は初主演とのこと。2013年のキネマ旬報ベスト・テン日本映画ベスト・ワン作品。原作は4コマ漫画で、先月DVD化された。

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 長崎を舞台にした人情喜劇。ペコロスという小さな玉ねぎに似ているハゲちゃびんのゆういち(岩松了)は、ボケてきた母親みつえ(赤木春恵)を抱えた男やもめで、息子も戻ってきたけれど、互いに仕事もあるしといった高齢化社会にはごく普通にあるであろう問題をコメディタッチで描いていく。現実はもっと過酷な状況なのかもしれないが、それを「ボケるとも悪か事ばかりじゃなかかもしれん」と考える前向きさには好感が持てる。

 出演陣が豪華で、いろんなタレントも登場するので、そのあたりも楽しい。宇崎竜童、温水洋一、サヘル・ローズ、志茂田景樹あたりも顔を出すし、周防映画から迷い込んだような竹中直人のカツラネタはやはりおかしい。
 出番は少なくても印象的なのが原田知世。笑うと前歯がかわいらしいのは相変わらずで、今でもとても若々しい(たしかぼくもよりも年上なはずなのだが)。長崎を舞台にした映画で、彼女の役は原爆の影響で早死する主人公の友達だったから、被爆2世という原田知世にとっては思い入れのある役なのかもしれない(みつえの若い頃を演じている実姉・原田貴和子もそうだろう)。

 現在ではボケてしまったみつえは、ときどきどこか意識が飛んだように過去の思い出に浸ってしまうことがある。そんなときに思い出されるのは原爆が投下された子供の頃や、アル中で暴力的な旦那と過ごした貧しい戦後だったりもするが、そうした過去も懐かしくなってくるようだ。浸れるほど波瀾万丈の過去があるというのはちょっと羨ましい気もしないでもなくて、平和な日本に暮らせるのはありがたいことだけれど、後になって思い出しても浸れるほどの物語もなさそうな世代の人間にとっては複雑な気分でもある。そんなことを思わせる、きわめて真っ当で見ごたえのある映画だった。