園子温の最新作。原作は井上三太のコミック。原作が描かれたのは90年代後半からということで、その前に流行っていたというチーマーみたいなものが背景にあるのだろう。
 渋谷・新宿・池袋・練馬・武蔵野といった東京の地域ごとにトライブ(族)を形成した若者たちの抗争を描く。宣伝文句では「バトル・ラップ・ミュージカル」ということで、全編というわけではないが登場人物たちがラップでのやりとりをしていく。

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 それぞれの街をセットで作りあげるという凝り方で、多分、園子温の映画のなかでは最も制作費がかかっているのではないだろうか(ただそのセットが「ナンジャタウン」とか「横浜ラーメン博物館」とかに見えてしまうのだが)。冒頭では、そうしたセットのなかをクレーン撮影でなめ回すように捉え、様々な人物が走り回り、ラップで歌う様子を長回しで見せていて、気合いが入っている感じは伝わってくる。そのテンションの高さは園映画らしいのだけれど、物語がほとんどないからハイ・テンションの維持がかえって単調な印象になっているような気もした。
 さらに言えば前作『地獄でなぜ悪い』でもそうした馬鹿騒ぎはやってしまっているから、二番煎じとも思える(ブルース・リー・ネタは今回も登場するし)。パンチラを厭わず回し蹴りを繰り出すヒロインのイメージもどこか『愛のむきだし』と被っている(ただ清野菜名はとてもかわいい)。そんな意味で、目新しさには欠けるかもしれない。
 それでも出演陣の豪華さはやはり楽しかった。でんでん演じる大司教はやっつけ仕事という感じだったけれど、大方の役者はそれぞれの役を楽しんでやっているように見えた。竹内力はもはや漫画だ。用心棒役のプロレスラー高山はあまり見せ場がなかったのが残念だけれど、大司教が送り込んだ黒人の通訳・亀吉(丞威という役者らしい)の身体能力の高さには目を瞠った。

 「バトル・ラップ・ミュージカル」という売りだが、『TOKYO TRIBE』では台詞の一部がラップとなっているというだけで、そのほかのミュージカルとそれほど違いはない。ちなみに「ラップ・バトル」というのは『8Mile』エミネムがやっていたものが本物なのだろう。『8Mile』は、音楽にのせていかに対戦相手の悪口を言うかという舌戦で、カッコよく相手を言い負かして、観客を沸かせるかが勝負になる。殴り合ったりするわけじゃないのだ。こっちは本当にカッコよかったなんて言ったら、日本のトライブたちに怒られるだろうか?