『Shall we ダンス?』の周防正行監督の最新作。
『ファンシイダンス』『シコふんじゃった。』みたいなコメディかと思って観に行ってみれば、舞妓になりたいと語っていた主人公が突然歌い出したのにまず驚く。「ああ、これはミュージカルなんだ」とわかると、そのあと言語学者(長谷川博己)と呉服屋社長(岸部一徳)の賭けが発覚し、「なるほど『マイ・フェア・レディ』のパロディか」と理解される。そのころにようやく題字が現れ、「『舞妓はレディ』ってのは、ダジャレかよ」とツッコミを入れたくもなる。
まあそんな意味では楽しい映画なのだが、ミュージカル場面はあまりノレなかった。楽曲がよくないのかもしれないし、意外と動きのない地味さも気になった。主人公が最初に歌い出す場面は、座布団に座ったままだったし、花街はセットを組んだらしくクレーン撮影もあるのだけれど、主人公がそこで歌う場面はただ遠目でそれを見ているだけなのだ(ラストは全員が登場し、賑やかな大団円になるが)。
また、『マイ・フェア・レディ』の「スペインの雨(The Rain in Spain)」という曲は、「The rain in Spain stays mainly in the plain.(スペインの雨は主に広野に降る。)」という発音の練習になっていたわけで、その言葉自体に意味はない。だから「京都の雨はたいがい盆地に降る」と替え歌にされてもピンと来なかった。そもそも知らない言語だと声も意味よりも音として聞こえるからまだ許せるものの、日本語だとどうしても意味としてしか聞こえないから違和感は甚だしかった。
ミュージカルシーンでの唯一の例外は、『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の大原櫻子が登場した部分。ここは楽曲(Moonlight)も大原櫻子の歌も素晴らしかったと思うし(一瞬、松田聖子かと思った)、チープなセットでの妻夫木聡との恋物語も良かった。
主役の上白石萌音はやや割りを食ったかもしれないが声も素晴らしかったし、昔の「おしん」みたいな素朴なキャラクターはとてもかわいらしかった。
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