『麦子さんと』『ばしゃ馬さんとビッグマウス』などの吉田恵輔作品。吉田作品としては初めての原作もの。その原作は、アニメ化もされているという人気漫画。今年3月に劇場公開され、10月15日にDVDがリリースされた。

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 進学校で落ちこぼれた八軒勇吾(中島健人)は、やりたいことが見つからないまま、親元から離れたい一心で、全寮制の農業高校へ入学する。周りは農家の跡取りばかりで、やりたいことがない八軒はちょっと異質な存在だが、彼らと触れ合ううちに八軒も変っていく。

 農家の現状を訴える部分と、後半ではスポ根ものの王道の展開が合わさったような形で、そつがない作品だったと思う。
 牛乳は農家からの買い取り価格が1リットルで83円だとか、可愛がって育てた豚でさえも、1頭で2万5千円くらいの肉にしかならないという話は、なかなか厳しい業界を示している。借金で離農に追い込まれる同級生もいる。
 経済動物という聞き慣れない単語が出てくるが、これは経済活動の一環として飼われている動物で、そんな動物たちはどんなに頑張って生きていても、時がくれば殺されて食べられる運命にある。そうした命をいただかないと生きてはいけない人間がいるからこそなのだが、だからこそおいしく食べてやるということが大事なのかもしれない(八軒がつくったベーコンはおいしそうだった)。
 本当はどこかで誰かが動物を殺し、血を抜き、肉を切り分けているわけで、何もはじめからパック詰めされているわけじゃないのだ。普段、豚などを殺す場面を見ていない消費者としては、罪悪感もなくそうした肉をいただいているわけだけれど……。吊るされて斬られる豚のおしりが結構生々しかった。

 後半はスポ根もののようになる。文化祭での手作りのばんえい競馬は青春映画らしい盛り上がりを見せるし、それなりにメッセージ性もあって泣かせるところもある。八軒は逃げ場所として農業高校へ向かったわけだけれど、生きるためには、時には逃げることも必要だ。また、やりたいことがないということは、これから何でもやりたいことが見つけられるということでもある。人生の岐路にある若者にはぴったりの映画かもしれない。
 ただ吉田恵輔作品としてはちょっと食い足りない感じも残った。原作の存在があるからかもしれない。原作の世界に縛られると、自由度は少ないだろうから。素晴らしい脚本を書ける人だけにちょっと残念。

 ヒロイン役の広瀬アリスはコメディエンヌに成りきっていたが、マンガチックなほどにはっきりした目鼻立ちで、本当はえらい別嬪さんなんだろうと思う。そのライバル役で黒木華が珍しく(?)アホな役を演じているのもおもしろかった。吹石一恵は『トゥームレイダー』のララ・クロフト風がぴったりはまっている。