初体験の相手であるジェロームと結婚したジョーだったが、ジェロームと結ばれた途端不感症になってしまうというのがVol.1の最後だった。Vol.1は意外にも笑える内容だったが、ラース・フォン・トリアー監督だけに、後半はその反動でどんな修羅場が待っているのかと期待もしたのだけれど……。
 回想シーンの主役がシャルロット・ゲンズブールに変ったことで、疲れた感じが出てマゾヒスティックなプレイに走る場面はよかったのだが、あんなことで不感症対策になるのだろうかと、童貞ではなくてもごく当たり前のプレイしか知らない者としては心配になる。そのほかにも黒人とのサンドイッチ・セックス(?)とか、自分の後継者として育てることになる少女とのレズシーンなど、あれやこれやのヰタ・セクスアリスが展開していく。

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 ジョーの告白も最後に近づき、路地に倒れていた理由なども判明するころになると、長い時間を過ごしたからかふたりの間には暖かい雰囲気が漂い、セリグマンはジョーの体験を「男だったらそんな体験も普通なのではないか」と肯定的に捉えようとする。ジョーは「ありがとう」などと語り、穏やかなハッピーエンドを迎える……。というわけもなく、セリグマンはイチモツをだらしなく丸出しにして、寝ているジョーに襲い掛からんとするというオチ。やっぱりラース・フォン・トリアーだった。
 ジョーはどこかで「偽善」という言葉を口に出しており、それはジョーの嫌うものであり、だとすればジョーは真実を直視しているとも言え、そんな意味で露悪的な存在になるのだろう。ジョーの告白はそんな露悪的なものだったはずなのに、最後に偽善のほうに流れつつあったところを、延々話を聞かされ影響を受けたかもしれない童貞セリグマンの露悪的な行動によって、元の状態を回復したというところだろうか? もともとこの映画はジョーとセリグマンの薄暗い部屋でのやりとりに終始するのだから。