サイの角のように 独りよがり映画論

映画について自分勝手な感想の備忘録。ネタバレもあり。 ほかのブログから引っ越してきました。

2013年05月

『ルビー・スパークス』 男のファンタジーの行く末

 ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス監督作品。ふたりが監督した『リトル・ミス・サンシャイン』はとてもかわいらしい映画で、家族がワーゲンの黄色いミニバスで旅をするロード・ムービーだった。ちなみにこのミニバスのイメージを借りたのが『少年メリケンサック』や『ハラがコレなんで』だと、映画評論家の森直人が指摘している。公開中のケン・ローチ監督『天使の分け前』でも、主人公が手にした金で手に入れたのが水色のワーゲンのミニバスだった。家族がミニバスに乗り込むイメージには幸福があるようだ。

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 『ルビー・スパークス』の主人公カルヴィンは夢見がちな小説家。演じるのは『リトル・ミス・サンシャイン』では無口な長男役で登場し、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』にも出ていたポール・ダノ。相手役のルビーにはゾーイ・カザン(エリア・カザンのお孫さんだとか)。
 カルヴィンは夢のなかで出会った女性を小説に描く。するとそれが現実に現れて……。という何ともファンタジックな物語。どことなくドラえもんの道具を思わせる古いタイプライターがいい。
 だけど、この映画は男の願望を叶えて終りというわけじゃない。脚本を描いたのが、劇中でルビーを演じるゾーイ・カザンだからだろうか。もしくは監督が男女ふたりのペアだからだろうか。男目線でスタートしながらも、男には手に負えない女性に主導権が移動するし、全体的には男のファンタジーだが、細部が妙に現実的なのだ。
 カルヴィンはルビーを好きなように描くことができる。例えば巨乳にしてみるとか、脱ぎながら歌わせるとか、三遍回ってワンと言わせるとか。だけど結局のところ、ルビーのすべてがカルヴィンの思うままになるわけじゃない。そんなことをすればするほど虚しくなるのだ。ふたりの幸せな同棲生活も長くは続かず、倦怠期がやってくるところは、実生活でも長年のつきあいという主演ふたりの実体験なんじゃないかとも邪推してしまう。
 「夢のなかの女」を自ら演じてしまうゾーイ・カザンはなかなか度胸があるけれど、夢のような存在には見えないところが残念か。陽の光を背に浴びて登場する場面などはかわいいのだが、普段の生活場面での落差が激しいような……。




『ライジング・ドラゴン』 ジャッキー・チェンの「最後のアクション超大作」

 ジャッキー・チェンの最新作。「最後のアクション超大作」とも謳われているのだから、やはり映画館に駆けつけないと。
 これまでにも最後という噂はあった気もするが、今回はマジな感じもする。エンドロールではジャッキーからのファンへのメッセージも登場するし、ラストで曰くありげに登場するのは本物の奥様なんだとか。

 ジャッキーが最後の作品に選んだのは“アジアの鷹”シリーズだ。『サンダーアーム/龍兄虎弟』では撮影中に大怪我をして死にそうになったわけだが、『ライジング・ドラゴン』でもラストの“落下系”アクションでそんな姿を思い浮かばせるような瀕死の姿――これはもちろん演出だが――を見せている。

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 インディ・ジョーンズに影響された“アジアの鷹”シリーズだけに、物語としては清王朝の秘宝を巡って冒険が繰り広げられる。とは言えジャッキー映画だから物語などどうでもいいわけで、政治的な言説――略奪された国宝だから奪い返して当然みたいな――なども気にせずに楽しめばいいと思う。地上波のテレビ放映となれば、無人島の部分はカットされそうな気もするが、ぼくは純粋にジャッキーのアクションを堪能した。
 アクション映画といえばやはりジャッキーだ。『エクスペンダブルズ』スタローンも、『ラストスタンド』シュワルツェネッガーだって、大好きなアクションスターだ。もちろん彼らの映画も充分楽しんできた世代なのだけれど、やはり一番はジャッキー・チェンだ。スタローンやシュワルツェネッガーのほうがカッコいいヒーロー像を見せてくれるかもしれないが、ジャッキーのような本物のアクションはできないからだ。ジャッキーのアクションはただひたすらに凄いのだ。終盤のソファー上の格闘は久しぶりにわくわくするアクションだった。これを観るだけでも価値がある。

 エンドロールでのジャッキーはファンに向かって「ありがとう」と語りかける。その言葉はファンであるぼくたちがジャッキーに言うべきであり、何だか泣けてきてしまった。とりあえずは「お疲れさま」と言いたいが、ジャッキーが映画界から去るわけではないし、『エクスペンダブルズ3』への出演の噂や『ポリス・ストーリー』の新作などもあるようだし、まだ楽しませてくれそうだ。



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