サイの角のように 独りよがり映画論

映画について自分勝手な感想の備忘録。ネタバレもあり。 ほかのブログから引っ越してきました。

2014年02月

『17歳』ともなれば、まじめ一筋ではいられない

 フランソワ・オゾン監督の最新作。邦題はアルチュール・ランボーの詩から。
 売春を通じての少女イザベルの「自分探し」の物語。そんなふうに要約すれば、どこにでもある物語と言えるわけだけれど、夏の初体験、秋の売春、冬の日常への回帰と進んできた物語が、春の場面に突入してちょっと意外な展開を見せる。春の場面で登場する人物を演じているのがシャーロット・ランプリングで、その存在感は圧倒的だった。

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 老齢の彼女の側からは、イザベルの売春に対して羨望の言葉が漏らされる。「もっと勇気があったら、あなたと同じことをしていたかも……」と。しかし、イザベルが彼女に対し批評めいた言葉を発するわけではないから、彼女に会って何を感じ、何を得たのかはわからない。それでも彼女の存在に魅せられていることは確かだろう。いつも無表情なイザベルが、彼女と過ごした後だけに満足げな表情を見せるのだから。監督のフランソワ・オゾンは、イザベルが何に満たされたのかを説明しようとはしない。そんなことは野暮だから。

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 主役イザベルを演じたマリーヌ・ヴァクトもとても魅力的な存在だった。横顔なんかはジュリア・ロバーツっぽくも見えるときもある。化粧をすると急に大人びて見え、学生と娼婦という二面性をうまく表現していたと思う。マリーヌ・ヴァクトが演じたイザベルは、自分が体験していることを傍から観察しているような、そんな浮遊した雰囲気がとてもよかった。実際に初体験の場面では、自分が男に乗られている様子をドッペルゲンガーとしての自分がじっとりと眺めていた。現実にうまく没頭できないような醒めた感覚がイザベルという少女にはあるのだ。


『抱きしめたい‐真実の物語-』 錦戸亮・北川景子主演の恋愛映画

 監督は『害虫』『黄泉がえり』『どろろ』など塩田明彦。実話をもとにしており、テレビでドキュメンタリー「記憶障害の花嫁 最期のほほえみ」として放送されたものの映画化である。
 エンドロールを最後まで観なかった人は知らないかもしれないが、最後には映画のなかで北川景子が演じているご本人の姿も登場する。彼女の背負った運命は過酷なもので、それについては何とも言い様がない。とは言えこの映画では、その後の話も描かれているように希望を感じさせる前向きな映画でもあるし、何だかんだ言っても泣かされる。

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 塩田明彦のことだから、『月光の囁き』『ギプス』のように、主人公に包帯を巻いて松葉杖を突かせてという姿を想像していたのだが、ちょっと違っていた。そんなフェティシズムとは無縁のまっとうな恋愛ものと言ってもいい。恋愛は妨げがあればより一層盛り上がる。その妨げとして、彼女が背負った障害があるのかもしれない。とは言え、前半はそうした障害をあまり感じさせない。彼女は車椅子姿で登場するが、気丈な女性で障害をものともせずに生きているように感じられるからだ。
 後半、障害からの回復の映像が出てくる。身体的な障害とともに記憶障害も負って、長い間意識が戻らなかったどん底の場面は、家庭用ビデオで撮影されている。それなりに衝撃的な半狂乱の場面なども粗い映像でうまく処理していたし(恋愛映画だから夢から醒めてしまうほどの残酷さではまずい)、実話をもとにしたリアル感も増していたと思う。北川景子もかなり熱の入った演技で、観ていても辛いほどだった。
 
 夜のメリーゴーランドの場面はとてもよかったと思う。この映画のような設定でなければ、あんなラブシーンはできないだろう。障害のある彼女を支えた――というか純粋に彼女を愛した男のやさしさは、ほとんどファンタジーとも思えるほどに素晴らしい。それを演じた錦戸亮主演のアイドル映画としてもファンには楽しめるだろうが、塩田監督の映画としてはどこか食い足りないような気もする。最近の作品は、作家性よりも職人に徹しているような……。





『ザ・イースト』 注目のブリット・マーリングが大活躍

 『ランナウェイ/逃亡者』などでアメリカでは注目されているというブリット・マーリングが主演・脚本を手掛けた作品。監督はザル・バトマングリッジ。そのほかの出演にはエレン・ペイジアレキサンダー・スカルスガルドなど。

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 主人公のサラ(ブリット・マーリング)は元FBIだが、現在はスパイ活動を行う民間企業に勤めている。アメリカではこんな業界すらも民間が参入するらしい。サラは過激な環境テロを行う「ザ・イースト」という組織に潜り込む。目的はクライアント企業を「ザ・イースト」のテロから守るためであり、「ザ・イースト」そのものを潰すことに主眼はないらしい。
 「ザ・イースト」という組織は、環境汚染や薬害など、社会に対する害悪を撒き散らす企業に対して鉄槌を下す。重油流出なら企業トップの家を重油まみれにするし、重大な副作用がある薬を販売する製薬会社の役員たちにはその薬を飲ませる。サラはテロを防ぐという正義と、企業の論理との間で板ばさみになる。そして彼らと一緒に生活していくことで、「ザ・イースト」の思想そのものに感化されてもいく。

 「ザ・イースト」の組織は、テロリスト集団というよりはカルト的な雰囲気。サラが初めて組織に潜り込んだ日の夕食は、一種の儀式となっており、全員が拘束着で食事をする。手を使えない状態でどうやってスープを飲むのか? サラはためらった末に犬のように皿に顔を突っ込むが、正解は違う。口でスプーンをくわえ、隣の人に自分の皿からスープを差し出すのだ。自分のスープは他人に、他人のスープは自分に分け与えられる。こうした思想の下では、企業が資本力に任せて環境を破壊したり、病人を食い物にして稼いだりするのは許せないということなのだ。

 町山智浩が言うには、この『ザ・イースト』で描かれていることは実際にあることなのだとか。薬害のエピソードが登場するが、飲んだだけで脳に障害が発生するような危険物を薬として平気で販売してしまう企業というのは恐ろしい。
 そうした事実は興味深いし、サラの葛藤もテーマとしてはいいのだけれど、主人公のキャラが有能すぎてマンガチックだし、男前のリーダーと寝てしまったりするのは、主演のブリット・マーリングが脚本も書いているからだろうか。ラストも妙に理想論過ぎる気がした。



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