主人公の真生(佐々木心音)はかつてスプーン曲げの超能力でマスコミを沸かした女。一度の失敗からいまではそういう世界から離れ、なぜか街娼みたいなことをしている。しかし、真生の超能力は本物で、彼女は人の死期をも知ることができる。一方で真生に近づく立花(大西信満)という男が現れる。真生は彼女の過去を知る芸能記者かと警戒するのだが……。
実は、大西の妻はテレビのディレクターで、取材を受けてほしいと追い回した真生に死期を告げられたことがきっかけで自殺してしまう。真生はこのときは悪意でそう言っているのだが、その一方で真生は菩薩のように見えるときもある。死を間近に感じる男も真生が身体を許すと、それに安寧を見出したように死を受け入れるようになる。ただ、踏み留まれたかもしれない命までも安易にあの世に送ってしまうという面もある。立花は妻をそんな形では失いたくはなかったわけで、真生に「死は出発なんかじゃない。終わりなんだ。」と迫ることになる。
真生が与える安らぎが間近の死から守ることもあれば、かえってその真っ只なかへと飛び込ませてしまうという両面があるというのはおもしろいと思うのだけれど、いまひとつ消化不良という印象も残る。監督の瀬々敬久はピンク映画の世界では名を知られた人だけに、もっと濃厚なベッドシーンなんかがあってもよかったかも……。
霧の中の場面なんかはとてもいいのだが、カーテンのない部屋の描写はわびしい(ストーブに当たりながらペヤングを食べるシーンが特に)。真生の清貧みたいなものの表現かもしれないが、予算のなさにも感じられる。
佐々木心音は『フィギィアなあなた』ではほとんど裸ばかりだったし、『TOKYO TRIBE』でもミニスカポリス風のコスプレで最初に登場して、猥雑な作品を強烈にイメージさせる役柄を演じていた。今回は化粧っけもなく彼女の素に近いのかもしれないが、作品全体が暗いトーンなのでちょっと割を食っているような気もする。
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