サイの角のように 独りよがり映画論

映画について自分勝手な感想の備忘録。ネタバレもあり。 ほかのブログから引っ越してきました。

2014年11月

『インターステラー』 169分でも足りないくらい濃密な映画体験

 『ダークナイト』シリーズのクリストファー・ノーラン監督の最新作。主演はマシュー・マコノヒー。共演にはアン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン、マット・デイモン、マイケル・ケインとかなり豪華。

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 169分というかなりの長尺ながら、それを感じさせないほど様々なアイディアが詰まった映画だった。地球の危機を救うという点では『アルマゲドン』的なディザスター映画を感じさせるし、幽霊話はシャマランに通じるものを感じる。さらには『2001年宇宙の旅』からの影響は明らかで(モノリスを思わせるロボット!)、SFと言っても「Science Fiction」ばかりでなく「Speculative Fiction」を思わせる部分もある。かなりB級スレスレのぶっ飛んだ展開をしつつも、最終的には科学的な説明をつけて、親と子の愛の物語へと結びつけるあたりは何だかんだ言っても見応えがあったと思う。

 ※ 以下、ちょっとネタバレも

 脇役だったマット・デイモンだが、彼が裏切り者だとはまったく考えなかったので、意外な展開には驚いた。『プロミスト・ランド』でもマット・デイモンは自分のことを「ぼくは悪いやつじゃない」などと言い、アメリカの旗を背負っていたわけで、そんなマットが裏切るなどとは思わなかったからだ。この後の展開はハラハラドキドキといったところで、このあたりは『ゼロ・グラビティ』を意識しているような気もするし、とにかく色々なものが詰め込まれて169分でも足りないくらい濃密な映画体験だった。
 最後はちょっと蛇足気味な感じがしないでもないけれど、全体としてはやはり観る価値がある作品だと思うし、長尺とはいえ映画館の迫力のある画面で観ておきたい1本だと思う。


『ショート・ターム』 ほどよい感動作だが……

 Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)で満足度99%だったという評判で観に行った作品。
 悪くはなかったけれどちょっと評価が良すぎるといった印象も受けた。
 監督は長編2作目のデスティン・ダニエル・クレットン

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 職場らしい何の変哲もない家の前に集まる4人。くだらないおしゃべりに興じていると突然子供が飛び出してくる。それだけでそこが何かしらの厄介な施設なんだとわからせる冒頭はなかなかよかったと思う。
 10代の若者を対象にした短期保護施設「ショート・ターム12」を舞台にした人間ドラマ。18歳になると施設は卒業ということになるらしいが、訳ありで家を離れ保護されている子供たちと、それを保護する側の主人公グレイス(ブリー・ラーソン)たちとの生活を描いていく。新たに入所してきたジェイデン(ケイトリン・デバー)の存在は、グレイスにとって自らの過去を思い出させるような対象で、グレイスはそこに自分の昔の姿を見出していく。

 10代の子供たちが自分の家に居られないという、ちょっと普通でない状態がそれなりにリアリティのあるものとして受け入れられているのは、実際にアメリカが多かれ少なかれそういうところなんだろうと思う。誰にも言えない秘密というと、虐待に加えた近親相姦というのが常識のように登場してくるのだが、ごく平凡に育ったものとしては未だに信じられないような部分もあって共感できるかと言えばそうでもなかった。
 グレイスの彼氏メイソン(ジョン・ギャラガー・Jr.)はとてもいい奴で、妊娠したグレイスが将来を不安に感じたのか調子を崩してメイソンを突き放したときも、戻って来たグレイスを優しく受け止める。メイソン自身も複雑な家庭環境だが、なかなか普通はあんなに人に優しくなることはできそうにない。心の闇を抱えて苦しんでいる少年少女たちが繊細なのはわかるのだけれど、それを受け止める側の過酷さもまた大変だろうと推測され、現実にはそんなにすっきりしないんじゃないだろうか。だから車をぶち壊してすっきりしたりとか、ラストの黒人少年のエピソードなんかはきれいにまとめすぎていて、ほどよい感動作なのかもしれないけれど突っ込みはいまひとつという感じもした。


『デビルズ・ノット』 結局「何もわからない」未解決事件

 以前『CHLOE/クロエ』という作品も取り上げた、アトム・エゴヤン監督の最新作。
 題材としては実在の事件をもとにしている。男児たちが惨殺されたこの事件は、その事件以上に、犯人として逮捕された「ウェスト・メンフィス3」と呼ばれる3人が、実は冤罪であったとして話題になったらしい。

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 少年たちが川のなかから死体として発見される。足首と手を結ばれた丸裸の姿は痛ましい。しかも少年たちのひとりは去勢されてもいる。警察はこの猟奇的な事件を、悪魔崇拝の儀式によるものだと考えて捜査を進める。そして犯人は意外に簡単に見つかる。ヘビメタを愛し、オカルトが好きな少年たちが逮捕されるのだ。私立探偵のロン・ラックス(コリン・ファース)は事件に疑問を抱き、独自に調査を始め弁護士に協力して冤罪で逮捕された少年を助けようとする。

 それにしてもアメリカの警察や司法がこれほど杜撰なのかと驚かされるような部分もあった。ウェスト・メンフィスという場所が結構な田舎で、保守的な場所なんだろうとは思うけれど、黒い服を着てうるさい音楽を聴いているからといった理由で明確な証拠もないのに逮捕されてしまうとは……。
 事件の裏に本当の悪魔崇拝者がいるのかどうかはわからない。劇中、悪魔に魂を売ったという「クロスロード伝説」で知られる、ロバート・ジョンソンの写真が登場するのは意味ありげではある。とにかく実際に少年を殺害した者が隠れていることは確かなわけで、「ウェスト・メンフィス3」と呼ばれた少年たちは、隠れ蓑として使われた犠牲者だったわけだ。
 ちなみに彼らが逮捕されることになる証言をした少年とその母親は、単に目立ちたいだけだったという話もあるようだ(このあたりは対談の動画から)。また、母親が悪魔崇拝者たちの儀式を見たとして語っているときに流されているのは『悪魔の追跡』という映画であり、彼女はこれをもとに儀式を現実に見たかのように語っていたわけで、意図はよくわからない。単に目立ちたいだけでそんなことをする人の精神状態は普通の人にはちょっと理解の範疇を超えている。
 実は、この事件をもとにしたドキュメンタリーは、ほかにいくつもあるとのこと(多分英語版のみ)。『パラダイス・ロスト』シリーズは3作目まで登場しているし、ピーター・ジャクソンが製作した『ウエスト・オブ・メンフィス 自由への闘い』という作品もあるらしい。どちらにしても事件が決着するわけではないようだ。

 エゴヤン作品は『エキゾチカ』がとても好きだし、ほかにもカンヌでグランプリを受賞した『スイート ヒアアフター』もよかった。これらの作品では、すでに終わった事件があり、その事件のあった過去と現在の間を行き来しつつ物語が進み、最後に別の何かが浮かび上がってくるという複雑な構成だった。この『デビルズ・ノット』はほとんど真っ直ぐに裁判のあらましを追って行くだけだし、最後になっても被害者の母親パム(リース・ウィザースプーン)が言うように「何もわからない」まま放り出されてしまう(あやしい人物については、字幕で知らされるけれど)。現実の事件が未解決だけに仕方がないのかもしれないけれど、とにかくもやもや感は半端ない。



『ポリス・ストーリー/レジェンド』 まだまだ伝説なんかにならないで

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 ジャッキー・チェンの前作『ライジング・ドラゴン』は、「最後のアクション超大作」と宣言しているわけだけれど、最新作は『ポリス・ストーリー/レジェンド』である。
 ジャッキーが短髪なのは珍しい。あの長髪はアクションが映えるようにという意図があるそうだが、その意味でもアクション映画を狙っているのではないのだろう。今回は物語のおもしろさで引き込まれる内容になっていると思う(あまりジャッキー映画でそんなことを感じたことはなかったのだけれど)。
 それでも金網デスマッチなどのアクションシーンもある。こういったアクションは、どうやら監督のリクエストらしく、ジャッキー本人も「だまされた」とか言っているらしいが、まあジャッキーの映画ならアクションを期待するのは仕方ないのかもしれない。ちなみにこの作品は、あの『ポリス・ストーリー/香港国際警察』シリーズとは関係ないとのこと。

 いつものジャッキー映画の雰囲気とは最初から違う。ジャッキー演じる刑事は、事件の捜査に向かうのではなく、娘(リウ・イエ)とクラブで待ち合わせをする。そこではパーティーが開かれていて、様々な客が招かれている。娘はある男をジャッキーに会わせるのだが、その男たちにジャッキーを含めた客は監禁されることになる。
 拘束から何とか逃げ出したジャッキーが建物内を動き回りながら、娘を救い出そうと奮闘するあたりは『ダイ・ハード』のよう。実は犯人は妹をある事件で亡くしていて、その現場にいた当事者たちをその場所に呼び込んで、復讐を遂げようと考えていたのだ。過去の事件が、当事者たちの証言で見方が変わっていくあたりは『羅生門』的な味わいに。ラストではジャッキーが自らに銃を向けるシーンもあり、アクションは控えめでも、ハラハラさせる映画として楽しめた。
 意外にもシリアスなドラマだったのだけれど、ラストではいつものNGシーンが登場するあたりはジャッキー映画を踏襲していて笑わせてくれる。

 やっぱりジャッキー・チェンの存在は特別だ。まだまだ伝説なんかにならないで楽しませてほしいところだ。たまたま見つけたこのブログでは、ジャッキー映画が世界の映画関係者に与えた影響をまとめていて、とてもおもしろかった。『ポリス・ストーリー/香港国際警察』のワンシーンをスタローンがパクっていたなんて知らなかった。



『ニンフォマニアックVol.2』 やっぱりラース・フォン・トリアーだった

 初体験の相手であるジェロームと結婚したジョーだったが、ジェロームと結ばれた途端不感症になってしまうというのがVol.1の最後だった。Vol.1は意外にも笑える内容だったが、ラース・フォン・トリアー監督だけに、後半はその反動でどんな修羅場が待っているのかと期待もしたのだけれど……。
 回想シーンの主役がシャルロット・ゲンズブールに変ったことで、疲れた感じが出てマゾヒスティックなプレイに走る場面はよかったのだが、あんなことで不感症対策になるのだろうかと、童貞ではなくてもごく当たり前のプレイしか知らない者としては心配になる。そのほかにも黒人とのサンドイッチ・セックス(?)とか、自分の後継者として育てることになる少女とのレズシーンなど、あれやこれやのヰタ・セクスアリスが展開していく。

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 ジョーの告白も最後に近づき、路地に倒れていた理由なども判明するころになると、長い時間を過ごしたからかふたりの間には暖かい雰囲気が漂い、セリグマンはジョーの体験を「男だったらそんな体験も普通なのではないか」と肯定的に捉えようとする。ジョーは「ありがとう」などと語り、穏やかなハッピーエンドを迎える……。というわけもなく、セリグマンはイチモツをだらしなく丸出しにして、寝ているジョーに襲い掛からんとするというオチ。やっぱりラース・フォン・トリアーだった。
 ジョーはどこかで「偽善」という言葉を口に出しており、それはジョーの嫌うものであり、だとすればジョーは真実を直視しているとも言え、そんな意味で露悪的な存在になるのだろう。ジョーの告白はそんな露悪的なものだったはずなのに、最後に偽善のほうに流れつつあったところを、延々話を聞かされ影響を受けたかもしれない童貞セリグマンの露悪的な行動によって、元の状態を回復したというところだろうか? もともとこの映画はジョーとセリグマンの薄暗い部屋でのやりとりに終始するのだから。


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