サイの角のように 独りよがり映画論

映画について自分勝手な感想の備忘録。ネタバレもあり。 ほかのブログから引っ越してきました。

2016年01月

キム・ギドクの最新作 『殺されたミンジュ』 ミンジュとは何者か?

 ミンジュというタイトルロールの女子高生は冒頭であっという間に殺されてしまう。ミンジュを殺した男たちは誰かに依頼されて殺したものらしい。場面は変わって、ミンジュを殺した男たちの一人(キム・ヨンミン)が迷彩服の男たちに拉致されて拷問を受けることになる。ミンジュの敵討ちなのか、謎の集団はミンジュを殺した男たちを一人ずつ拷問にかけることになる。

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 冒頭の展開が早いのはギドク風である。それから7度の拷問シーンが続いていくのだが、ギドクは「韓国の歴史のトラウマを7つのチャプターを通して描いて」いると語っている。韓国の歴史をよく知らないからわからないのだが、ミンジュという女の子の名前は「民主主義」を意味しているわけで、ギドクは韓国での民主主義のあり方を嘆いている。

 怒りが感じられる部分もあるのだけれど、初期のころの個人的な恨みというよりは社会的な問題について頭で考えましたという印象が強い。ギドクも成熟してきたのかもしれないけれど、その分激しい感情的な部分が見えずもの足りないような気もする。

 

 この作品はギドク初めての2時間超えの作品だ。その作品を10日間の撮影で仕上げているというのはすごいことだが、結構、粗が目立つ。レストランの場面では、テーブルが映されるたびにそこに置かれている料理が変化したりというミスをしている。

 撮影監督はギドク本人ということであまり凝った画面はない。『嘆きのピエタ』のときも素人っぽい撮影監督だったわけだが、それすらも面倒で自分でやってしまうということらしいのだが、そんなに予算がないのだろうかとかえって心配にもなる。

 DV男とその恋人のベッドシーンでは、キム・ヨンミンのおしりが何度もしつこく映される。昼は乱暴な男だけれど、夜はそんな男が欲しいんだろう、そんなことを言いそうなシーンだからわざとやっているのかもしれないけれど、おしり以外にもカメラを向けるところがあるだろうと思うのだが……。


『チョコリエッタ』 丸坊主の森川葵にキュンとなる

 フェリーニの名作たちにオマージュを捧げた作品。監督は『せかいのおわり』の風間志織。大島真寿美の同名小説が原作。

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 主人公の高校生知世子(森川葵)は亡くなった母親からチョコリエッタという愛称で呼ばれていた。その母親(市川実和子)はフェリーニ『道』が大好きで、自分の愛犬にジュリエッタという名前を付けていて、その犬と一緒に育てられているから知世子もチョコリエッタと呼ばれているというわけだ。

 親を亡くして「犬になりたい」と考えている少女の物語だから、結構ハードな部分がある。トラウマを抱えた少女の回復の物語なのだ。チョコリエッタは自殺願望を抱いているようで、その先輩の正岡正宗(菅田将暉)は殺人願望を抱いているという病んだふたりのひと夏の話となっている。

 原作者が映画好きなのか、監督がそうなのかは知らないけれど、映画のネタが盛り込まれている。ザンパノとジェルソミーナが旅芸人としての芸を見せるところも再現されていて、フェリーニの作品が好きな人はより楽しめるのだろうと思う。ちなみに犬のジュリエッタという名前は、『道』でジェルソミーナを演じたフェリーニの奥様でもあったジュリエッタ・マシーナから採られている。フェリーニのファンなら知っていることだろうけど。

 チョコリエッタは映画研究部という今どき流行らない部活に入っていて、実際そこはつぶれる寸前というあたりも映画が好きな人が作ったものなんだろうなと思わせる。というのもぼくも学生時代にちょっとだけそういうサークルにいたことがあるので……。犬小屋を燃やすあたりなんかは昔の自主制作の映画のそれっぽい雰囲気だった。

 結構重い話だけれど、主人公チョコリエッタを演じる森川葵がとても初々しいところがよかった。チョコリエッタは自分で丸坊主にしてしまうのだけれど、それでも森川葵の丸坊主は清々しい印象すらある。『勝手にしやがれ』ジーン・セバーグを意識している部分もあるのだろうけど、もっと子供っぽいけれどとてもかわいらしい。

 フェリーニの作品ももっと観たくなった。『フェリーニのアマルコルド』も未だ観ていないので……。

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