サイの角のように 独りよがり映画論

映画について自分勝手な感想の備忘録。ネタバレもあり。 ほかのブログから引っ越してきました。

2016年02月

『ベルファスト71』 住宅街という戦場

 ロッテン・トマトで97%という満足度をたたき出した作品。

 監督はこの作品がデビュー作となるヤン・ドマンジュ

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 1971年のベルファスト。アイルランドのプロテスタントとカトリックの対立はこれまでも色々な映画が取り上げてきた題材だが、この作品はそんな戦場の場所に取り残されてしまったイギリス軍の一兵士のサバイバル・ドラマとなっている。99分があっという間という感じだった。

 住民を安心させるという名目でヘルメットや盾もなしでベルファストの中心地に降り立つイギリス軍。占領されたと感じている住民たちは彼らに非難の声を浴びせる。そうこうしているうちに暴動へと発展し、ゲイリー(ジャック・オコンネル)は住民のなかに取り残され同僚の兵士は住民のひとりに銃殺される。

 スピーディーな追いかけっこから始まって、暴動が起きた夜をこっそり逃げ回るサスペンス、IRA内部の抗争なんかにも巻き込まれて両方から命を狙われる始末でとにかくハラハラとさせる映画だった。

 イギリス軍の上層部は平服でスパイみたいなことをしていて、IRA穏健派とつながって様々な策を練っている。IRAの過激な活動をしている暫定派のひとりを逃がしていることからもイギリスが裏で紛争を操っているらしいことも見て取れる。大国のやりたい放題は恐ろしいものがある。

 同じ時期にDVDがリリースされた『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』でも、この作品と同じように「デヴィッド・ボウイは女の子向け」という台詞があるのがおもしろい。向こうのイメージでは女の子向けという印象なんだろうか。

『ソレダケ/that's it』 石井岳龍の爆音ムービー

 石井聰亙改め石井岳龍監督の最新作。

 『狂い咲きサンダーロード』の系列のハイ・テンションな話で楽しめた。出演陣も意外に豪華で、日本映画の旬な人材が顔を揃えていると思う。

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 『生きてるものはいないのか』の主役だった染谷将太と、『シャニダールの花』の主役だった綾野剛が、物語のなかで対立する大黒砂真男(染谷)と謎の極悪ギャングのボス千手完(綾野)をそれぞれ演じている。染谷の役柄は髪型とか車イスに乗るところが『ストレイヤーズ・クロニクル』の役を思わせてしまうのが難点かもしれないが、綾野剛はそれほど出番は多くないけれどカッコよく決めている。そのほか渋川清彦村上淳なんかも絡んできて、なかなか騒がしい。白黒で始まった映画が次第に色を持ち始め、最後はマンガチックな対決へと向かっていく。

 吉村秀樹率いるロックバンド「ブッチャーズ」の爆音ロックが響き渡り、作品の激しいイメージを決定づけている。『生きてるものはいないのか』でもノイジーな音楽が印象的だったのだけれど、『ソレダケ/that's itの「ブッチャーズ」の爆音もクセになる。「ブッチャーズ」のボーカル吉村秀樹は亡くなってしまったらしいのだが、この作品は「ブッチャーズ」の楽曲が着想を得て作られたものだとか。

 紅一点の水野絵梨奈は元E-girlsなんだとか。アイドルみたいにかわいらしく見せようとしてないあたりは好感が持てたと思う。染谷とふたりで歩いてくる場面に育ちの悪さみたいなものすら感じられたのがよかった(もちろん役柄上のことだが)。どこか池脇千鶴っぽく見える瞬間もあり。

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『ブラック・スキャンダル』 ジョニー・デップの最新キャラ

 ジョニー・デップの最新作。いつもみたいな派手なキャラではないわけだけれど、ハゲづらというコスプレを楽しんでいるようなところもあり。本当のジョニー・デップの姿はどんなものだったのかもはやわからなくなってくる。

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 実在のジェームズ・ホワイティ・バルジャーというアイリッシュ・マフィアの一代記。

 施設で育った子供たちが長じてマフィアになり、FBIになり、政治家になる。彼らにとっては仕事よりも幼いころからの仲間への忠誠心のほうが大きい。FBIとなったコノリー(ジョエル・エドガートン)は地域にのさばるイタリアン・マフィアを潰すために、ジミー・バルジャー(ジョニー・デップ)を情報屋として利用することを提案する。そしてその代わりにジミーはFBIからお墨付きを与えられどんどん調子に乗っていく。

 なぜこの人物が映画の題材になったのかがよくわからない。あまり魅力的な人物ではないからだ。最後にジミーに対しての人物評として挙げられるのは「根っからの殺人者」というもので(「単なるの殺人者」だったかも)、かといって震えがくるほど恐ろしいキャラでもない。裏切り者は許さねえと言いつつ、自分はFBIとつるんでいることからもわかるように支離滅裂なのだ。子供には「暴力を振るうなら誰も見ていないところで」、と言いふくめていたのにジミーはどんどん大胆になり、白昼堂々と殺人を犯すようにもなる。

 いろんな顔を揃えてみましたという感じのところはおもしろかったが、それだけだったようにも思えた。ジミーの弟役のベネディクト・カンバーバッチは政治家役だけに出番は少ない。マフィアが政治家と仲がいいなんてことはさすがに描きづらいのか。とりあえずは事実をもとにしているとのことで、ドラマティックなものが感じられなかった。


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