園子温監督が1995年に撮影しながらも未完だった作品。今回、初期作品集に合わせてようやく完成させたものとのこと。本編161分の大作だ。

 製作は1995年あたりだと言うから、園監督がメジャーデビューする前で、まだ自主制作のような泥臭い感じを残している。とは言え、そのころに園が主催していた「東京ガガガ」というパフォーマー集団(?)が中心にいるからこじんまりとした感じはなく、奇妙奇天烈な連中が騒ぎまくるというエネルギッシュな映画である。

 園監督によれば、本来の結末は地下鉄でテロが起きるはずだったのだという。実際には地下鉄サリン事件が起きたため、その結末ではなくなっているわけだが、この映画で描かれる外国人排斥の騒動は、ちょっと前の在特会(在日特権を許さない市民の会)とそれに反対するグループとの抗争なんかを思わせなくもない。この映画自体はそうした政治とは無関係だと思うけれど、時代を先取りしていた部分もあるようだ。

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 日本人のグループと中国人のグループが対立するあたりはTOKYO TRIBEを思わせなくもない。実はそのグループを横断するようにほかのグループが出来てきて、それがゲイ&レズビアンのグループだというのがおもしろい。それでいて両者の仲立ちをするはずの通訳のふたりはなぜか融和を嫌っていて暗躍することになる。

 TOKYO TRIBEは巨大なセットを作り、こだわったカメラワークなども披露していたわけだが、BAD FILMは手持ちカメラでとにかく人を追い回している。舞台は東京の中央線沿線を中心にしていて、ゲリラ的に撮影したものと思われる。なかには渋谷のスクランブル交差点や、新宿駅前をほとんど占拠するような場面も登場する。撮影許可なんか下りないだろうから好き勝手にやっているはず。高円寺あたりの電話ボックスを破壊しているシーンがあるけれど、大丈夫だったのだろうか? 大半はデタラメなエネルギーの発散にも見えるのだが、妙に少女趣味みたいなところがあったり、詩的でもあり、その後の園作品の色々な萌芽が垣間見えるような気もする。

 

 特典映像としてその時代に園監督がやっていた「東京ガガガ」という運動(騒動?)に関しても収められている。外見的には遅れてきた学生運動みたいだが、政治的な主張はなく、とにかく安定した社会に対する園子温のいらだちみたいなものは感じられる。その騒動を傍から見ている人の視線も映されていて、唖然とした表情には胡散臭いものを見ているというのが明らかである。ただ一方でそうした騒動に参加した人も多かったようで、当時「東京ガガガ」に参加した人は2000人くらいいたのだとか。