以前に取り上げた『マリアの乳房』と同じく、「ラヴストーリーズ」というシリーズの1本。

 この映画の主調音となっているカッコいいギターの音は、ジャズギタリストの伊藤茂利とのこと。

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 人を信じないという元ギタリスト・岩田(火野正平)は、音楽への夢をあきらめ、住み込みのマンション管理人として生活していた。そこで、そのマンションに住む愛人業(つまりは囲われ者)の女・ユミ(桜木梨奈)と出会ってしまう。

 

 ユミをファム・ファタールと呼べるのかどうかはわからないけれど、ユミは男を転がすことに慣れているし、それは生来のものに見える。ただ、男を貶めようとしてするのではなく、単に独りではいられない寂しい女なのかもしれない。

 せっかく管理人の仕事に就いて、平穏な生活を送ろうとしていた岩田も、ユミによってその平穏さを乱されていく。性欲の亢進が芸術的なひらめきを生んだのか、ユミに会うことであきらめていた音楽への想いも戻ってくる。ユミはダンサーでもあり、ふたりはギター弾きとダンサーとして街を巡る流浪の生活をすることになる。

 

 「ラヴストーリーズ」というシリーズは、昔のロマンポルノのような形態を目指しているのだろうか? 監督と脚本の石川均はピンク映画出身らしいし、エロシーンを物語に絡ませておけば、あとは比較的自由にやっているように推察される。このLAST LOVE/愛人』も予算はかなり限られている印象だけれど、男と女が堕ちてゆくというロマンポルノ的な王道(?)を描いていて魅せられた。

 ユミを演じた桜木梨奈はキレた感じの演技がはまっていた。ユミは双極性障害(いわゆる躁鬱病)であり、その先には統合失調症(いわゆる分裂病)が予想されている。高笑いしすぎて過呼吸のようになって卒倒するなんて、かなりのオーバーアクトとも見えるけれど、そういう類いの女は現実にいるような気がする。

 桜木梨奈のやや小ぶりな胸はとてもきれいだったし、大きくてうつろな瞳も役柄に合っていた。男が惹かれるのはわからなくもないのだが、一番厄介な種類の女だとも思う。

 最後は意外とあっさりとしているが、暗い道行きを予感させるようで、暗澹とした気持ちになった。精神病院での男女を描いていた『リリス』と同じように……。