『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー姉弟の監督作品。オリジナル脚本としては『マトリックス』以来とのこと。

 

 都会での掃除ばかりの生活にうんざりしていたジュピター(ミラ・クニス)だが、実は宇宙を支配する王族の王女さまで、次々と刺客から狙われる破目になるものの、狼と人の混血というケイン(チャニング・テイタム)に助けられ、大宇宙を巻き込んだ闘いに巻き込まれることになる。

 ジュピターがなぜ狙われるのかと言えば、宇宙の支配者である3兄弟の母親とまったく同じ遺伝子を持って生まれてきたからとのこと。遺伝子の組み合わせが無限のものでない限り、まったくあり得ないことではないわけで、そんな輪廻転生もありかという点ではおもしろい。

 ただ、平凡な女の子が実は王女さまだったなんて話はどこかで聞いたことがあるはずだし、CGを駆使したのであろう絵面もどこかで見たことのあるようなものばかりだったようにも思えた。

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※ 以下、ネタバレもあり。


 ネタをばらさなかったところで『ジュピター』のダメさが隠されるわけでもないからさらっと言ってしまうと、地球は人間よりも知能の高い異星人たちによって植民された星だったという設定である。恐竜が栄えていたころに地球にやってきて、恐竜を滅ぼしその代わりに人間を産み出した(どこか『プロメテウス』の筋に似ている)。そして彼らの目的は、永遠の命を得るために人間の命を収穫することだった。

 設定はつまらなくはないが、脚本の出来はかなりいい加減。人間を産み出したという異星人3兄弟はさほど魅力的でもないし(アカデミー賞主演男優賞のエディ・レッドメインも)、長女は年増女として登場して、永遠の水によって若返るというためだけに存在しているようなキャラだった。『クラウド・アトラス』でも重要な役を演じていたペ・ドゥナも途中で消えてしまうし、話が進めば進むほど物語に興味を失っていく感じだった。

 突然現れた「白馬の王子様」ならぬ「空飛ぶブーツのボディーガード」に恋してしまうジュピターの描き方も、女ごころの機微を掬い取っているとは思えなかった。ラナ・ウォシャウスキーは女性になったらしいけれど……。『バウンド』のほうがよっぽどエロくてカッコイイ女を描いていたことを思うと、女性になれば女性を描けるというものでもないのかもしれない。

 空飛ぶブーツで摩天楼を飛び回るアクションは悪くはないが、『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』の空飛ぶスケートボードと『スパイダーマン』を合わせた印象で、新味はなかった。しかも最後の脱出シーンは妙に滑稽だった。