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 音楽映画というのは楽しい。『セッション』はあまり馴染みのないジャズを扱った作品だけれども、やはり音楽の力には人の心を高揚させるものがあるようで、ジャズをまったく知らない人でも問題なく楽しめる。しかもこの作品は音楽に加えて、スポ根ものみたいな要素も付け加わっている。主人公を指導するフレッチャー教授は言ってみれば『巨人の星』の星一徹みたいなもので、主人公をいじめ抜くわけだが、主人公もそれに負けじと対応してどんどんすごいことになっていくのだ。最後の対決には本当に釘付けになるし痛快でもあった。

 ちなみにこの作品はヤフーのトップページにも取り上げられるほど一部では話題になっている。ジャズを実際にやっている関係者からそのリアリティに難癖が付けられたからで、それに対して映画評論家の町山智浩が反論したとして盛り上がっているのだ。実際にジャズをやっている人から見れば、それはあり得ないと思うようなことはあるかもしれないけれど、一般的な映画ファンからすればそんなことは気にならないわけで、ヤフーの映画コーナーでも高い評価を獲得している。ぼくも久しぶりに映画館で興奮したという気がする。

 主人公ニーマンのドラムをフレッチャーが「もっと速く」と煽る場面があるが、ここでは実際にニーマンを演じたマイルズ・テラーの手から血が流れ出したとのこと。主人公のあこがれであるバディ・リッチの映像を見ると、たしかにそんなこともあるだろうと思える。バディ・リッチのドラムは素人が見てもすさまじい(玄人が見ても精確無比なんだとか)。


 さすがに映画はここまでアンビリーバブルとはいかないけれど、とにかく高揚感はハンパないことは確かだと思う。硬派なジャズファンでもなければ、観て損はない映画だと思う。この作品のフレッチャー役でアカデミー賞の助演男優賞を獲得したJK・シモンズの熱演も見所。彼の煽りがこの映画に熱を帯びさせているからだ。