石井聰亙改め石井岳龍監督の最新作。

 『狂い咲きサンダーロード』の系列のハイ・テンションな話で楽しめた。出演陣も意外に豪華で、日本映画の旬な人材が顔を揃えていると思う。

soredake_sub5

 『生きてるものはいないのか』の主役だった染谷将太と、『シャニダールの花』の主役だった綾野剛が、物語のなかで対立する大黒砂真男(染谷)と謎の極悪ギャングのボス千手完(綾野)をそれぞれ演じている。染谷の役柄は髪型とか車イスに乗るところが『ストレイヤーズ・クロニクル』の役を思わせてしまうのが難点かもしれないが、綾野剛はそれほど出番は多くないけれどカッコよく決めている。そのほか渋川清彦村上淳なんかも絡んできて、なかなか騒がしい。白黒で始まった映画が次第に色を持ち始め、最後はマンガチックな対決へと向かっていく。

 吉村秀樹率いるロックバンド「ブッチャーズ」の爆音ロックが響き渡り、作品の激しいイメージを決定づけている。『生きてるものはいないのか』でもノイジーな音楽が印象的だったのだけれど、『ソレダケ/that's itの「ブッチャーズ」の爆音もクセになる。「ブッチャーズ」のボーカル吉村秀樹は亡くなってしまったらしいのだが、この作品は「ブッチャーズ」の楽曲が着想を得て作られたものだとか。

 紅一点の水野絵梨奈は元E-girlsなんだとか。アイドルみたいにかわいらしく見せようとしてないあたりは好感が持てたと思う。染谷とふたりで歩いてくる場面に育ちの悪さみたいなものすら感じられたのがよかった(もちろん役柄上のことだが)。どこか池脇千鶴っぽく見える瞬間もあり。

B_U63aZUgAEQMvh