ジャコ・ヴァン・ドルマル監督の最新作。原題はTHE BRAND NEW TESTAMENT

 ジャコ・ヴァン・ドルマルと言っても、これまでに4作品しか撮っていないという寡作な人だけにあまり知られていないかもしれないが、カンヌ映画祭でカメラ・ドール賞を受賞した『トト・ザ・ヒーロー』は大好きな作品(「ブン!」という古臭い曲が耳から離れない)なので、劇場まで観に行ってきた。

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 なんと神様はベルギーのブリュッセルにいたという設定。この神様(ブノワ・ポールヴールド)はパソコンで世界を動かしている。気晴らしに自分に似せて人間を創り、様々な災害を降り注いで鬱憤晴らしをしている。さらには変な法則――マーフィーの法則によく似ている――を作ってこの世界を生きづらくしているというとんでもない神様。

 とは言えこの神様は自分のことを「嫉妬深いの神」と呼んだユダヤ教の神(旧約聖書の神)とよく似ている。この作品ではイエスも登場する。イエスは主人公エア(ピリ・グロワーヌ)の兄という設定。2000歳以上も歳の離れた兄妹なのだ。キリスト教はイエスが神との新しい契約(新約聖書)を結んだことが始まりとなっているわけだが、エアはその契約をさらに更新して「新・新約聖書(THE BRAND NEW TESTAMENT)」を示すことになる。

 

 最初はなかなかテンポがいい。エアが神様に反旗を翻して、人間に決められた寿命をメールで知らせてしまうと、下界はちょっとだけ混乱に陥る。寿命にさらに先があると知ると、自殺を図るバカな男は何をやっても死ぬことはない(ひどい怪我を負ったりはするのだけれど)。

 しかしながら中盤以降の新たな使徒として集められる人々のエピソードがあまり弾けた感じがないのがちょっと残念なところ。カトリーヌ・ドヌーヴも登場するけれど、もったいない使い方。ただラストは心暖まる話になっていると思う。クソみたいな男の神様よりも女のほうが世界をうまく生きているというのは、人間と同様なのだろうと思う。

 『8日目』の主人公だったダウン症の男の子がちょっとだけ顔を出しているのが嬉しい。それでもそのエピソードはダウン症の人たちのシビアな現実を垣間見させるもので、『8日目』で描かれたことはあまり変わっていないのだろうと思わせる。