サイの角のように 独りよがり映画論

映画について自分勝手な感想の備忘録。ネタバレもあり。 ほかのブログから引っ越してきました。

ウォシャウスキー

『ジュピター』 どこかで見たようなダメな作品

 『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー姉弟の監督作品。オリジナル脚本としては『マトリックス』以来とのこと。

 

 都会での掃除ばかりの生活にうんざりしていたジュピター(ミラ・クニス)だが、実は宇宙を支配する王族の王女さまで、次々と刺客から狙われる破目になるものの、狼と人の混血というケイン(チャニング・テイタム)に助けられ、大宇宙を巻き込んだ闘いに巻き込まれることになる。

 ジュピターがなぜ狙われるのかと言えば、宇宙の支配者である3兄弟の母親とまったく同じ遺伝子を持って生まれてきたからとのこと。遺伝子の組み合わせが無限のものでない限り、まったくあり得ないことではないわけで、そんな輪廻転生もありかという点ではおもしろい。

 ただ、平凡な女の子が実は王女さまだったなんて話はどこかで聞いたことがあるはずだし、CGを駆使したのであろう絵面もどこかで見たことのあるようなものばかりだったようにも思えた。

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※ 以下、ネタバレもあり。


 ネタをばらさなかったところで『ジュピター』のダメさが隠されるわけでもないからさらっと言ってしまうと、地球は人間よりも知能の高い異星人たちによって植民された星だったという設定である。恐竜が栄えていたころに地球にやってきて、恐竜を滅ぼしその代わりに人間を産み出した(どこか『プロメテウス』の筋に似ている)。そして彼らの目的は、永遠の命を得るために人間の命を収穫することだった。

 設定はつまらなくはないが、脚本の出来はかなりいい加減。人間を産み出したという異星人3兄弟はさほど魅力的でもないし(アカデミー賞主演男優賞のエディ・レッドメインも)、長女は年増女として登場して、永遠の水によって若返るというためだけに存在しているようなキャラだった。『クラウド・アトラス』でも重要な役を演じていたペ・ドゥナも途中で消えてしまうし、話が進めば進むほど物語に興味を失っていく感じだった。

 突然現れた「白馬の王子様」ならぬ「空飛ぶブーツのボディーガード」に恋してしまうジュピターの描き方も、女ごころの機微を掬い取っているとは思えなかった。ラナ・ウォシャウスキーは女性になったらしいけれど……。『バウンド』のほうがよっぽどエロくてカッコイイ女を描いていたことを思うと、女性になれば女性を描けるというものでもないのかもしれない。

 空飛ぶブーツで摩天楼を飛び回るアクションは悪くはないが、『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』の空飛ぶスケートボードと『スパイダーマン』を合わせた印象で、新味はなかった。しかも最後の脱出シーンは妙に滑稽だった。

『クラウド・アトラス』 輪廻転生が果たした役割は?

 『マトリック』シリーズのウォシャウスキー姉弟と『ラン・ローラ・ラン』『パフューム ある人殺しの物語』のトム・ティクヴァが共同で監督。出演はトム・ハンクスハル・ベリーペ・ドゥナなど。
 19世紀から文明が崩壊して地球を脱出するまでの物語。6つの時代のエピソードを同時並行的に描くという実験的な作品。われわれ観客はわけもわからずにそれらを観ていくしかないが、それが退屈にならないところはさすがにハリウッド製エンターテインメント。約3時間の長丁場だが一気に見せる。

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 しかし、終わってから冷静に考えてみるとよくわからないことも多い。『クラウド・アトラス』では、たとえばトム・ハンクスは6つの時代すべてに登場するわけだが、それによって物語に何らかの影響があるのかと言えば、そうとも思えない。
 トム・ハンクスの演じるのは、輪廻転生によって生まれ変わっていく魂みたいなものなわけで(肉親関係だから顔が似ているというわけではない)、輪廻という考え方はこの映画では重要な位置を占めている。それにも関わらず、なぜか輪廻が物語全体に大きな影響を与えないというのが不思議なところか。エピソードを結びつけているのは、文学・音楽・映画などの芸術や宗教などなのだ(あるいはシチューエションの類似性から無理やり結び付けたりもするが)。
 そうした各エピソードを結びつけるものに関わる人には、この映画ではほうき星型のあざが付けられている。それらは各エピソードの主役だが、まったく関係のない6人だ。三島由紀夫『豊饒の海』などでも、輪廻する対象にはわかりやすいマークが付けられるが、この映画ではまったく関係ない人物にマークが付けられているから、かえって混乱するような……。もしかすると神の御意志に導かれた人物が、ほうき星型のあざを背負っているということなのかもしれない。そうだとしたら、地球崩壊に至るのも神の御意志ということになり、この映画はノアの箱舟の再現みたいな話とも言えるのかもしれない。

 無表情なクローンを演じたペ・ドゥナは、出演シーンが多いわけではないが今回も何故だか印象に残る。個人的には『ムーラン・ルージュ』でジドラー役を演じていたジム・ブロードベントが大きな役(2012年の老編集長役や1931年の大作曲家役)として登場していたのが嬉しかった。





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