サイの角のように 独りよがり映画論

映画について自分勝手な感想の備忘録。ネタバレもあり。 ほかのブログから引っ越してきました。

グイ・ルンメイ

『GF*BF』 三角関係と同性愛と……

 台湾の80年代から90年代を背景にした青春映画。

 主演のひとりには『薄氷の殺人』のファム・ファタール役がよかったグイ・ルンメイが出ているのでレンタルしたもの。2012年製作の台湾映画だが、レンタルが登場したのは今年7月に入ってから。

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 美宝(メイバオ)は忠良(チョンリャン)のことが好きだけれど、忠良は実はゲイで……という関係があって、そこに台湾人とイギリス人のハーフである心仁(シンレン)が絡んでくる。男ふたりと女ひとりという三角関係だが、そこに同性愛も交じっているというのがキモだろうか。

 最初は美宝と忠良は公認の仲として登場するが、実際には男女の関係は何もない。心仁はそれを知って美宝と付き合うことになるわけだが、美宝は忠良と心仁の男同士の関係を羨ましくも見ている。多分、忠良は心仁に好意を抱いている。心仁は人付き合いがいいタイプで、忠良のことを人間的に好きらしくとても親しげに接してくるから、そんな姿に美宝は嫉妬したりもするわけで、なかなか複雑な関係になっている。

 時代的には民主化運動が賑やかだったころの話で、日本で言えば60年代後半とかの学生運動みたいな雰囲気もある。心仁はそんな運動でリーダーシップをとっていたわけだけれど、大人になれば「造反有理」といったスローガンばかりを叫んでばかりもいられなくなり、心仁はいわゆる「転向」をして体制側に付くことになる。そんな時代の変化に応じて3人の関係も変化していく。

 

 ※ 以下、ネタバレもあり!


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 3人がベッドで絡むように編集されている場面がある。実際は、恋人同士であった美宝と心仁のベッドシーンに、忠良が恋人の男と絡むシーンが重ね合わされてそんなふうに見えるだけだ。ゲイである忠良は女である美宝を抱くことはないし、心仁はノンケだから忠良と寝ることも無理な話だということになる。

 結局、想いがすれ違っているところがあるわけで、美宝と心仁の関係も3人の微妙な関係をつなぎあわせるだけのものでしかなったのかもしれない(そんなだから心仁は美宝が離れた場所にいるときに、ほかの女の子と付き合い出してしまう)。なかなか切ない部分が多くて泣かされる話だった。

 美宝を演じたグイ・ルンメイは男女とか言われるような活発な女の子を演じていて、学生運動時代には長髪になったり、社会人となってスーツ姿を見せたりと見所いっぱいだったと思う(腕でハートマークをつくる仕草が妙にかわいらしかった)。

 ふたりの相手役もとてもよかった。心仁を演じるリディアン・ヴォーンは逆モヒカンで登場して目を引く。ハーフだけにイケメンである。忠良を演じたジョセフ・チャン『真夜中の五分前』にも出ていたが、いかにも男っぽい感じでゲイっぽい雰囲気を醸し出していてとてもよかった。



『薄氷の殺人』 中国製のフィルム・ノワール

 第64回ベルリン国際映画祭で『グランド・ブダペスト・ホテル』や『6才のボクが、大人になるまで。』を退けて、金熊賞と男優賞(銀熊賞)を受賞した作品。

 監督はこれが3作目となるディアオ・イーナン。主演には『ライジング・ドラゴン』にも出ていたリャオ・ファンと、日本にもファンは多いというグイ・ルンメイ『藍色夏恋』『海洋天堂』『GF*BF』など)。

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  ある石炭工場で切断された遺体の一部が見つかる。それらは別の地域にある工場でも次々と発見される。刑事のジャン(リャオ・ファン)は犯人を追うものの、ちょっとした油断で容疑者につながる人物を失い、自分もケガを負って警察を辞めざるを得なくなる。5年後、似たような事件が発生すると、その被害者の周囲には、最初の事件の被害者の妻であったウー(グイ・ルンメイ)の存在があることが判明する。

 

 長回しの場面も多いのだが、アクションの場面などはちょっとぎごちない感じもした。警察の失敗で容疑者に拳銃を渡してしまい銃撃戦になる部分などは、銃が床に落ちてからの警察の反応の遅さにちょっとびっくりした。また、スケート靴での殺人というのは意表をついているけれど、そのアクションがうまかったとは思えなかった。

 逆に、トンネルを抜けると途端に雪国に移行することが、そのまま時間の経過を表すという場面はとても素晴らしかったと思う。それからウーがスケートで逃げるように滑り続けるのを、カメラがどこまでも追っていくという場面もよかった。歩いたり走ったりするのとは違って、何の上下動もなく移動しているのを、クローズアップで見せるという演出は奇妙な感覚だった。

 男を惑わせる女(ファム・ファタール)といい、夜の場面も多いところからしてもフィルム・ノワールの作品ということなのだろうと思う。ウーは意図せずにファム・ファタールになってしまうという存在で、儚さと強さが同居しているといったグイ・ルンメイはよかった。それにも関わらずあまり陶然とするような時はなかったようにも思う。手法に意識的なのはわかるけど、あまりこなれてないからだろうか。

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