サイの角のように 独りよがり映画論

映画について自分勝手な感想の備忘録。ネタバレもあり。 ほかのブログから引っ越してきました。

ソダーバーグ

『恋するリベラーチェ』 マイケル・ダグラスとマット・デイモンの熱演に拍手

 『サイド・エフェクト』を最後に引退の表明したスティーブン・ソダーバーグが撮ったテレビドラマ。日本では映画館での公開となった。アメリカではエミー賞において作品賞、監督賞、主演男優賞(マイケル・ダグラス)などを受賞した。

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 リベラーチェとはアメリカに実在したピアニストにしてエンターテイナー。派手なステージ衣装はプレスリーやエルトン・ジョンにも影響を与えたのだとか。リベラーチェはゲイであり、エイズで死ぬことになるが、最後までそのことを公にはしなかった。映画の最後で彼は「何事も度が過ぎると素晴らしい」みたいなことを言って去っていく。これ以上ないほどのド派手な衣装と徹底的なエンターテインメント、私生活では何人もの若い男をはべらせてハーレムを築く、最後の言葉はリベラーチェの生き方そのものみたいだった。

 リベラーチェを演じたマイケル・ダグラスは、きらびやかなステージを華麗にこなし、一方で禿げ頭(メイクアップらしい)で脂肪のついた老体をさらす熱演ぶり。恋人であり、秘書であり、息子でもあるような、スコット・ソーソンを演じたマット・デイモンは、金髪を伸ばして妙にかわいらしく見える。
 また脇役だが久しぶりで懐かしいのがロブ・ロウ。胡散臭い整形外科医を演じているが、この人物はフェイスリフトで顔が引きつっているという設定らしい。出てきただけで異様な雰囲気で、能面のように顔の形状は変わらないのだが、微妙な眉の動きだけ感情を表している。演技というよりは顔芸だが、一見の価値あり。

 リベラーチェとソーソンの関係は、純愛というよりはどちらとも打算的だ。リベラーチェは若き金髪のアドニスを手に入れたいと思い、孤児であるソーソンは金や豊かな生活を求めるとともに父親の姿も重ねている。打算的だから一度手に入れてしまえば窮屈になるわけで、結局関係は破綻して行くことになるが、そのなかには一抹の真実もあったものとして描かれている(現実はもっとどろどろしていたようだが……)。ラストでソーソンが思い描く幻想が美しい。いかにも作り物のきらびやかな世界で、メイクと派手な衣装で着飾ったリベラーチェが天に昇っていくように思えた。
 ソダーバーグの演出は正攻法で、奇抜なところはないが、ふたりの関係をじっくりと描いていく。かつての愛人を蹴散らしてリベラーチェの愛人に納まったソーソンだが、結局は自分も同じような憂き目に遭うことになる。予想がつく展開ではあるが、追い出される側になっていくソーソンの立場はやはり切ない。


『サイド・エフェクト』 ソダーバーグ監督の最後の映画?

 スティーブン・ソダーバーグ監督の最後の映画になる予定とか。ソダーバーグはこれを最後に映画は引退してほかのジャンルに挑戦するのだとか。
 ソダーバーグは26歳で『セックスと嘘とビデオテープ』でカンヌのパルムドールを受賞してデビュー。『トラフィック』ではアカデミー監督賞を獲得。近年は毎年2本の映画が公開されるなど精力的な活動をしていたのだが。まだ50歳だけに惜しい気もする。
 試写会にて鑑賞。公開は9月6日から。

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 バンクス医師(ジュード・ロウ)は精神科医。ある日、自殺未遂の女性患者エミリーと出会う。エミリーは鬱を患っており自殺念慮で突然車ごと壁に激突したのだ。バンクスは入院を勧めるが、エミリーには刑務所から戻ったばかりの夫がいて、エミリーは通院での治療を希望する。バンクスは治療のなかで新薬をエミリーに処方するが、そのサイド・エフェクト(副作用)には夢遊病の症状があった。その夢遊病の最中にエミリーは夫を刺し殺してしまう。
 
 前半の主人公がエミリーだとすれば、後半の主人公はバンクス医師になる。バンクスは患者が新薬の副作用で事件を起こしたことから窮地に立たされる。マスコミに追われ診療所は追い出され、家族との気持ちも離れていく。突然事件に巻き込まれたバンクスはどうするか?

 以下、ネタバレも。観てない方はご注意を!


 信じられないことが起きたとき、人は陰謀論を語りたくなるようだ。9・11テロとかダイアナ王妃の事故死とか、必ず影の組織が陰謀を巡らせてという話がどこからか沸いて出てくる。バンクス医師も同様で「自分がはめられた」と騒ぎ出したときは、家族の誰もそれを信じなかったし、観客のぼくとしてもバンクス医師がありがちな混乱に陥ったのかと疑った。「ヒッチコック的なサスペンス」とか言われているが、そんな荒唐無稽な陰謀が実は本当だったというのでは、サスペンスとしての出来は今ひとつというところだろう。いかにもあやしい登場人物が本当に陰謀を仕組んでいるところもちょっと驚きに欠けるかも。
 『ドラゴン・タトゥーの女』で主役をやっていたルーニー・マーラーがエミリー役。『ドラゴン・タトゥーの女』とはまったく違った表情を見せている。今回も脱ぎっぷりはいい。鬱というのは本人にとっては本当にツライものらしいのだが、この『サイド・エフェクト』では、突然の自殺にしても「本人が苦しそうに見えないなあ」などと思っていると、鬱は詐病だったことがわかる。「なるほどね」と納得したとしても、そこまでして夫を殺害する理由に説得力はない。

 余分なものを削ぎ落とした語り口を目指しているというソダーバーグ。そつがなく普通に楽しめる映画という意味で貴重なのかもしれないが、最後の作品にしては物足りない気もする。もっとも『恋するリベラーチェ』という作品の公開がまだ残っている。こちらはマイケル・ダグラスとマット・デイモンが同性愛カップルを演じるのだとか。




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