『嘆きのピエタ』などのキム・ギドク監督の最新作。

 ただいま劇場公開中だが、セリフは一切ないため、海外版のDVDでも観ることができる。

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  家族というものは最初に性的な結びつきがないと構成されないものなのだろうが、普通それは隠されているわけで、夫と妻の最初の結びつきは過去のものみたいなフリをして家庭を営んでいくことになる。ギドクの『メビウス』という作品は、そのあたりに焦点を当てている。そして何より男のイチモツを巡ってのすったもんだが描かれている。

 そんな意味でフロイトのエディプス・コンプレックスを思わせる話ではあるし、パンフレットでは上野千鶴子がギリシャ神話に引き寄せてこの映画を論じているのだが、実際はそんなに高尚な代物でもないような……。切り取られたイチモツを追いかけて追いかけっこをしてみたり、転がっていったそれがトラックに轢かれてペシャンコになるなんてドタバタは笑うしかないし、ギドク作品にありがちな荒唐無稽な展開もこの作品は今まで以上に際立っている。だからギドクファンはおもしろがれるかもしれないけれど、一般的には呆れられそうな気もする。

  久しぶりにギドク作品の常連のチョ・ジェヒョン『鰐』『悪い男』など)が出てくるのは嬉しかった。それから妻役と愛人役の一人ニ役をこなしたイ・ウヌは印象に残った。完全にイッている妻と、冷静でかわいらしくも見えたりする愛人は、別人にしか見えなかった。どうやったらあんなに化けることができるんだろうか? 次回作は日本映画の『さよなら歌舞伎町』で、こちらも楽しみ。