サイの角のように 独りよがり映画論

映画について自分勝手な感想の備忘録。ネタバレもあり。 ほかのブログから引っ越してきました。

マット・デイモン

『プロミスト・ランド』 ガス・ヴァン・サントとマット・デイモンの3度目のタッグ

 シェールガス革命なんてことも言われるようで、これまでのエネルギーの代わりになることも期待されているエネルギーがシェールガスらしい。しかし実際にそれが革命的でクリーンなエネルギーなのかは定かではないとも言われる。そんな環境問題に取り組んだ作品。
 マット・デイモン演じるスティーヴは大手エネルギー会社の幹部候補で、マッキンリーという田舎町に土地の買占めにやってくる。しかし環境汚染の観点から反対する住民もいて、賛否の投票がなされることになる。その後、環境保護団体のダスティン(ジョン・クラシンスキー)も町に現れ、ネガティブキャンペーンを始め、反対派の勢力が増してくるが……。

 この映画はマット・デイモンが脚本を書いて、ガス・ヴァン・サントが監督した作品だ。そうなるとどうしてもマット・デイモンが脚本と主演を担当し、ガス・ヴァン・サントが監督した『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』を思い出す。ガス・ヴァン・サント作品は『ジェリー』(この作品もマットの主演・脚本)や『エレファント』のようなよくわからない芸術風な作品と、ウェル・メイドで誰にもわかりやすい作品の系統があるが、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』は後者の代表だろう。だから観客としてはそれらしい感動作を期待してしまうのだが、そうなるとちょっとおさまりがよくない気もした。
 スティーヴは悪い青年ではないのだが、このご時勢ではあまり歓迎されるような人物ではない。「いい人だと思うけど、仕事がね」などと言われている。酔っ払って本音が出た際には、「もう死にかけている町なのに、何もしようとしない。シェールガスに賭ければたんまりと金が手に入るのに……」みたいなことを言い、地元の若者に殴られる。アメリカの良心みたいなイメージすらあるマット・デイモンがこんなことを言い出すものだから、ちょっと混乱し、どこに着地点を見出すのか予想がつかなかったのだ。

 ※ 以下、ネタバレもあり。

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 結論から言えば、スティーヴは「ぼくは悪いやつじゃない」と繰り返し言っていたように、やはりマット・デイモンは悪役ではなかったようだ。最後の最後で善悪がひっくり返るからだ。『グッド・ウィル・ハンティング』ではロビン・ウィリアムズ演じる善人のカウンセラーによって、「君は悪くない」と諭されて真実に辿り着くとすれば、『プロミスト・ランド』はその逆で自分が加担していた悪に気づくことで真実に辿り着くといった感じかもしれない。
 ただ、『プロミスト・ランド』における善悪はあまりはっきりとしたものではない。環境汚染はあるのかもしれないが、相棒スー(フランシス・マクドーマンド)のように家族を抱えていればそう言ってもいられないからだ。結局のところ、スティーヴは仕事を投げ出してしまうような形になったが、彼の会社でなくとも別の会社がその町を目指してやってくるだろうし、問題解決になったのかはよくわからない。複雑な問題を複雑なまま示しているから現実と同様あまりすっきりとはしないようだ。環境に対する問題提起としては有効だとは思うのだが……。




『恋するリベラーチェ』 マイケル・ダグラスとマット・デイモンの熱演に拍手

 『サイド・エフェクト』を最後に引退の表明したスティーブン・ソダーバーグが撮ったテレビドラマ。日本では映画館での公開となった。アメリカではエミー賞において作品賞、監督賞、主演男優賞(マイケル・ダグラス)などを受賞した。

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 リベラーチェとはアメリカに実在したピアニストにしてエンターテイナー。派手なステージ衣装はプレスリーやエルトン・ジョンにも影響を与えたのだとか。リベラーチェはゲイであり、エイズで死ぬことになるが、最後までそのことを公にはしなかった。映画の最後で彼は「何事も度が過ぎると素晴らしい」みたいなことを言って去っていく。これ以上ないほどのド派手な衣装と徹底的なエンターテインメント、私生活では何人もの若い男をはべらせてハーレムを築く、最後の言葉はリベラーチェの生き方そのものみたいだった。

 リベラーチェを演じたマイケル・ダグラスは、きらびやかなステージを華麗にこなし、一方で禿げ頭(メイクアップらしい)で脂肪のついた老体をさらす熱演ぶり。恋人であり、秘書であり、息子でもあるような、スコット・ソーソンを演じたマット・デイモンは、金髪を伸ばして妙にかわいらしく見える。
 また脇役だが久しぶりで懐かしいのがロブ・ロウ。胡散臭い整形外科医を演じているが、この人物はフェイスリフトで顔が引きつっているという設定らしい。出てきただけで異様な雰囲気で、能面のように顔の形状は変わらないのだが、微妙な眉の動きだけ感情を表している。演技というよりは顔芸だが、一見の価値あり。

 リベラーチェとソーソンの関係は、純愛というよりはどちらとも打算的だ。リベラーチェは若き金髪のアドニスを手に入れたいと思い、孤児であるソーソンは金や豊かな生活を求めるとともに父親の姿も重ねている。打算的だから一度手に入れてしまえば窮屈になるわけで、結局関係は破綻して行くことになるが、そのなかには一抹の真実もあったものとして描かれている(現実はもっとどろどろしていたようだが……)。ラストでソーソンが思い描く幻想が美しい。いかにも作り物のきらびやかな世界で、メイクと派手な衣装で着飾ったリベラーチェが天に昇っていくように思えた。
 ソダーバーグの演出は正攻法で、奇抜なところはないが、ふたりの関係をじっくりと描いていく。かつての愛人を蹴散らしてリベラーチェの愛人に納まったソーソンだが、結局は自分も同じような憂き目に遭うことになる。予想がつく展開ではあるが、追い出される側になっていくソーソンの立場はやはり切ない。


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