盲目の貝類学者(リリー・フランキー)は沖縄の孤島で貝を収集する日々を過ごしている。ラジオから聞こえてくる世界の様子は終末へ向かっているようにも感じられるが、その島は美しい海と静かな生活があった。そんなときひとりの女が島に漂流してくる。いづみという女は世の中で流行り出している奇病に侵されているのだが、貝類学者が見つけてきたイモ貝という貝の毒にやられて病を完治する。するとその噂を聞きつけた奇病の患者たちが島にやってくるようになって……。

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 世界は不思議に満ちている。貝類は昆虫類に次ぐ種類を持つそうだが、どうしてそんな様々な形態を持つのか誰にもわからない。海の底のサンゴの美しさとか、巻貝のらせん形状とか世界には謎ばかり。この映画も謎を謎として提示しているようで前衛的なものを感じさせる。昔観た『アンモナイトのささやきを聞いた』という作品を思い出した。

 寺島しのぶ演じるいづみは貝の毒にやられると死に掛かって走馬灯というか何かしらの幻影を見る。その何だかよくわからない幻影の描写がとてもひとりよがりなものに感じられた。何だかわからないけれどスゴイだろみたいな感じだろうか。その押し付けがましさはいづみが貝類学者の押しかけ女房として振舞う感じともよく似ているような……。

 個人的にはお気に入りの橋本愛が巫女さんのような雰囲気で登場するところが眼福で、それだけでも観る価値はあるとは思うが、全体的には前衛風味が鼻についた。