タイム・トラベルものの作品で、かなり世間の評判はいいらしく、ぼくが観たときは小さな映画館は満席だった。ただ純粋なタイム・トラベルものを期待すると、ちょっと拍子抜けかもしれない。というのも、タイム・トラベルの効果がとても他愛のないものになっているからだ。
 主人公ティム(ドナルド・グリーソン)のタイム・トラベル能力は、一族の男に伝わるものという設定になっている。ティムの父親(ビル・ナイ)はその能力で何をしたかというと、ディケンズをより多く読み返すのだ(何度タイム・トラベルしても歳はとらないらしい)。これはとても優雅な話だが、能力の無駄遣いとも思える。
 そして、ティム自身はといえば、のちに奥さんになるメアリー(レイチェル・マクアダムス)との関係のためだけにその能力を使っている(妹を助けたりもするけれど)。だから結婚を決めたあたりでタイム・トラベルの出番は少なくなる。『アバウト・タイム』は、人生における失敗をやり直すといったタイム・トラベルものにありがちな目的へ向かうのではなく、人生そのものを肯定するというきわめて健全なテーマへと進んでいくのだ。

 ※ 以下、ネタバレもあり!

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 ティムはタイム・トラベル能力で状況をコントロールし、メアリーとの関係を育て、幸せな生活送っている。それでも人生には戻れない一点というのが存在している。その一点を越えて過去に戻ってしまうと、未来に大きな影響が出てしまうのだ。
 ティムは初めてメアリーに出会ったあと、友人を助けるために過去に戻ったために、ふたりの出会いという事実は消えてしまう。それでもメアリーとの再会は、自分でセッティングすることができた(個人情報を知っていたから)。それは回復可能だったわけだ。しかし、子供の誕生という一点だけは再びやり直すことができない。ある時に受胎した子供と、別の時に受胎した子供が同じ人物になるはずがないからだ。そんな意味で子供という存在――つまりそれはティムたちやほかの大人たちも同様なのだが――それはそれぞれにかけがえのないものだということを示している。ラストは何だか泣かされた。
 色々と矛盾も多いし、都合のよすぎる部分もあるが、日々の大切さを改めて感じさせるまっとうに楽しい映画だった。レイチェル・マクアダムスの笑顔はとてもかわいらしくて、幸福感に満ちたこの映画の雰囲気に合っている。