原作は高井有一の同名小説。監督・脚本には荒井晴彦。
出演は二階堂ふみ、長谷川博己など。ふたりは『地獄でなぜ悪い』でも共演している。
今日は首相の戦後70年の談話が発表される予定とのことで、「戦後70年目」に際して『野火』『日本のいちばん長い日』のような第二次大戦を題材にした作品が公開されている。『この国の空』も戦争を題材としているが、血が流れるのは蚊が叩かれるところと、主人公が処女を喪失する場面のみ。そんな意味ではちょっと珍しい視点の作品だったように思う。
舞台は東京杉並で空襲もなく一応普通の生活があるものの、戦況は激しさを増していることも伝わっていて、主人公の里子(二階堂ふみ)は「結婚もできずに死ぬのか」という想いを抱えている。戦地で実際に敵と対峙する兵隊たちはもちろん大変だっただろうが、戦争が奪うのはそればかりではないことがよくわかる。最後の二階堂ふみの声で朗読される茨木のり子の詩「わたしが一番きれいだったとき」が里子の心情そのままみたいにぴったりだった。
わたしが一番きれいだったとき
わたしの国は戦争で負けた
そんな馬鹿なことってあるものか
ブラウスの腕をまくり卑屈な町をのし歩いた
ちなみにこの作品では二階堂ふみのおしりを垣間見ることができる。市毛(長谷川博己)との初体験が終わったあとの行水の場面だが、恥ずかしさから里子が灯りを暗くさせるために少々薄暗いが若々しい後姿のヌードだった。
この記事では監督は二階堂に腋毛をつけさせようと考えていたとのことだが、どうやら二階堂は嫌がったようだ(ネタ元が信頼できるのかはよくわからないが)。「わたしが一番きれいだったとき」と謳っているのに腋毛が黒々としていたらちょっと興ざめするかもしれない(インパクトはあったかもしれないが)。別のシーンでは母親役の工藤夕貴が明るい日差しの下で腋毛を披露していて、かつてはそっちのほうが普通だったのだろうとは思うのだけれど……。