『愛のむきだし』を見て以来、気になる存在であり続けている安藤サクラの主演作品を3本まとめて。
『百円の恋』
6月10日にDVDがリリースされたばかり。
『百円の恋』という題名だが、恋らしい恋はない。落ち目のボクサー(新井浩文)とそれらしい関係にはなるが、この映画はアラサーのダメな女がボクシングで奮起するスポ根ものだ。やはり何だかんだ言っても単純なスポ根ものは楽しい。今回取り上げている3本の安藤サクラ作品のなかでも断然これが好き。
安藤サクラがすべての映画。「松田優作賞」という賞を受賞したという脚本は優れたものだが、筋はありきたりとも言える。主人公の一子というキャラクターに命を吹き込めなければ何の意味もないわけで、安藤サクラは完璧にそれをやってのけている。約10日の撮影期間だったらしいが、最初のでっぷりと脂肪のついた身体は、ラストの試合ではボクサーの絞り込んだ身体に変わる。最後は一子を夢中で応援してしまうと思う。
『0.5ミリ』
監督・脚本:安藤桃子、主演:安藤サクラという姉妹コンビの作品。エグゼクティブプロデューサーには奥田瑛二、フードスタイリストには安藤和津という、ふたりの両親の名前もクレジットに登場するという家族映画である。5月13日にDVDがリリースされた。
主人公の山岸サワ(安藤サクラ)は介護職をしているが、ある事故をきっかけにすべてを失って街に放り出される。それでもサワはじじいたちを捕まえては“押しかけヘルパー”として生きていく。196分という長尺だが、じじいたちのキャラがおもしろくて見せられてしまう。
押しかけられるじじいたちがまた多彩な面々。詐欺にやられそうな坂田利夫は、“アホの坂田”に近いところで笑わせる。スケベな偽教授役の津川雅彦は、後半で驚くほどの長セリフを聞かせるのが見所。また、安藤サクラにとっては現実の義父となる柄本明(息子の柄本佑は安藤サクラの旦那)とも共演していて、きわどいカラミなんかもあったりして役者ってのは大変だなあと変なことを感じたりもする。
『白河夜船』
よしもとばななの小説の映画化。
4月末から劇場公開され、東京での上映はすでに終了。
原作に何の興味もなかったが、安藤サクラを目当てに鑑賞。しかし、たまらなく退屈だった(だから何も書く気にならなかった)。長回しというのは時間が長く感じられるが、この映画は91分なのに、やたらと長く感じられる。
主人公の寺子(安藤サクラ)は男(井浦新)に囲われている。男には妻がいるが、その妻は事故で植物状態なのだ。寺子は囲われた部屋でナルコレプシーみたいに眠りこけているが、観客のこちらも眠気に誘われる。芸術を気取った長回しが多いのだが、それに変化もなければ緊張感もない。安藤サクラは裸や下着だけのシーンなんかも多くて頑張っているが、ベッドシーンというものは長く続くと退屈である(アダルトビデオが退屈なのと同じで)。ピロートークにどこのウナギが食べたいとかの無駄話を見せ続けられるのはきつい……。