実践映画塾「シネマ☆インパクト」を主宰していた山本政志が、『恋の渦』で稼いだお金をつぎ込んで製作したという最新作(先月にDVDがリリースされた)。
山本政志という名前はどこかで聞いていたのだけれど今回が初めての鑑賞。
主役の玄里は「王様のブランチ」などにも出ていた人らしいが、3カ国語を操る才女。この作品で高崎映画祭最優秀新進女優賞を受賞した。共演の趣里は水谷豊と伊藤蘭の愛娘とのこと(やはりお母さんに似ているような)。
新興宗教の教祖が主人公というきわどい題材。主人公のミンジョン(玄里)はたまたま祭り上げられてしまっただけの教祖さま。友人の坂井美奈(趣里)とともに占いの真似事なんかを始めてみたところ人気が出てしまって、それを利用しようという広告代理店の男(村上淳)などが裏方になって「真教・神の水」という教団を立ち上げることになる。
ミンジョンは在日韓国人。バーに飲みに出かけて仲間とくだらない話に興じるようなごく普通の女の子だが、教団内で教祖の役を演じるときはチマチョゴリに身を包み、神からの言葉を授ける。
教団が大きくなっていくにつれ、小さくまとまっていたもののなかにも考え方の違いが生まれてくる。そんななかでミンジョンは母親や祖母の人生を知ることで、ニセモノの教祖から本物の祈り求めるようになる。
宗教的な儀式として重要な役割を演じる水のイメージがとても印象的。宗教を舞台にした映画だと思うと堅苦しいけれど、そんなこともなくミンジョンの父親みたいな裏社会とつながっている人物とかも登場して物語はにぎやかに進んでいく。本物の教祖に目覚めてしまうミンジョンの代わりに、コントロール可能な新教祖をでっちあげたりするのも新興宗教だったらありそう。色々なキャラクターが蠢いている感じでエネルギッシュだった。
この作品がよかったから山本政志監督の過去作品をいくつか観た。海外で評判を取った『ロビンソンの庭』は前衛作品みたいな雰囲気。緑の森のイメージがとても素晴らしく、水のイメージにも溢れている(スタッフには諏訪敦彦や平山秀幸の名前も)。ただこのサイトのインタビューなんかを読むと、監督自身が「インテリやヨーロッパに支持されて吐き気がしてきちゃって」などとも語っている。アホな映画も好きなようで『アトランタ・ブギ』は町内の運動会になぜかベン・ジョンソンが登場するというハチャメチャな作品というわけで両極端な印象も。『水の声を聞く』はエンターテインメントとアートの両面がごっちゃになったようなところがよかったと思う。
また、『聴かれた女』という作品はAV女優の蒼井そらが主役。蒼井そら演じる主人公が隣に引っ越してきた男に盗聴されるという話。最初は蒼井そらってこんな顔だった(?)と疑問に思いながら見ていると、実は盗聴男の妄想のなかという設定。実際に女の姿を見ると本物の蒼井そらが登場する。DVDでは盗聴男の妄想と、その見えなかったはずの映像がリンクするというおもしろい設定もある。