駆込み寺についての物語。井上ひさしが11年もかけて連載した小説『東慶寺花だより』が原案となっている。監督は『突入せよ! あさま山荘事件』や『日本のいちばん長い日』などの原田眞人。
劇場公開時も評判がよかった作品だが、今月になってソフトもリリースされた。
今でも離婚するのは色々と面倒なこともあるようで、そうした裁判沙汰も多いように聞いているのだが、江戸時代では女の地位は今よりも男に従属的なものであったらしく、夫が妻に離縁を申し立てることはできたとしても、逆のこと――つまり妻が夫に離縁を申し出る――は許されなかったようだ。しかし、そんな社会のしきたりからは免れることができる聖域(アジール)として駆込み寺があって、妻がそこに逃げ込んで2年間の時間を過ごせば、寺が旦那から離縁状をもらうことができるようになる。そんな話は聞いたことがあったけれど、それを具体的な物語として見たのは初めてだったのでとても興味深かった。
世間のルールは歴然として存在しているわけだけれど、一種の治外法権として、徳川家直轄のというお墨付きでその寺が運営されているから、命が惜しいものはどんな悪者も手を出すことはできない。命が惜しくない奴にはやっぱりそんなことも効かないわけで、今の時代ならそうした縛りさえ破ってしまうようなストーカー的な人物も多いから駆込み寺が有効なのかはあやしいところだけれど……。
仕事を妻に押し付けて遊郭に入り浸る亭主とか、その他諸々のアホな男によって江戸時代にも女は虐げられている。そんな意味では暗くなりそうな題材だけれど、駆出し男である信次郎(大泉洋)のキャラのせいか不思議とのほほんとした感じになっている。
駆込み寺のなかは女性だけの聖地で、それなりに平穏無事な生活があるわけだけれど、彼女たちは別に出家者ではないから女性同士の嫉妬があったり、久しぶりの男の匂いに色めき立つこともあったりするのがおもしろい。はちみつ浣腸あたりはかなりきわどいネタだけれど笑える。
虐げられる女じょごを演じた戸田絵梨香がとてもよかった。今年は『予告犯』や『エイプリルフールズ』にも登場していたが、色々な顔を見せてくれたと思う(どちらも映画としてはひどかったが)。それから満島ひかり演じるお吟の婀娜っぽい生き方もいい。病で衰えていく姿を本当に好いた男には見せたくはないって何だかカッコいい。