サイの角のように 独りよがり映画論

映画について自分勝手な感想の備忘録。ネタバレもあり。 ほかのブログから引っ越してきました。

橋本愛

『PARKSパークス』 橋本愛による吉祥寺十題噺

 監督は『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』などの瀬田なつき

 吉祥寺の井の頭恩賜公園の100周年を記念してつくられた作品ということ。製作にはちょっと前に閉館したバウスシアター関係の人とかも関わっているとかで、とにかく吉祥寺を知っている人には楽しめる作品かもしれない。

パークス

 井の頭恩賜公園の桜の風景から始まるこの作品は、とにかく吉祥寺の魅力満載で、落語の三題噺ではないけれど、吉祥寺十題噺といった趣き(オチはないけれど)。吉祥寺と言えば、まずは井の頭公園であり、いせやの焼き鳥であり、サンロード、井の頭線、成蹊大学、ハーモニカ横丁、それからバウスシアター……。そういった馴染みの場所を舞台に青春模様が描かれる。

 冒頭の場面からとてもさわやかで観ていて心地いい。井の頭公園の桜は有名だけれど、花見の時期は混雑でひどい有様なのだけれど、この作品内ではとてもキレイに描かれているし、ドローンを使って上空から撮影したと思われるシーンなどもあって、いつもとはちょっと違う公園の風景を見せてくれる。公園の木々の緑もとてもあざやかな印象で、井の頭公園や吉祥寺のイメージアップには一役買うんじゃないかと思う。

 一方の物語はいまひとつパッとしないような感じで、橋本愛永野芽郁染谷将太の3人組が吉祥寺をあちこち走り回って音楽活動などをしてみるものの、若者らしい無目的な行動を表現しているのかもしれないけれど、物語もどこにたどり着くこともなく終わったような印象でもあった。

 お目当ての橋本愛はいつも通り素敵だったし、妹キャラ的な永野芽郁も表情豊かで可愛らしい。永野芽郁は最近CMなんかでも見かけるけれど、この映画のほうがとてもいい。それから染谷将太はTOKYO TRIBEでもやっていたラップでテンション高いところを見せている。まあ、橋本愛のファンには色々と楽しめる作品となっているとは思うのだけれど、それ以上のものとはちょっと言い難いか……。

『シェル・コレクター』 前衛的なのはともかくとして橋本愛を

 盲目の貝類学者(リリー・フランキー)は沖縄の孤島で貝を収集する日々を過ごしている。ラジオから聞こえてくる世界の様子は終末へ向かっているようにも感じられるが、その島は美しい海と静かな生活があった。そんなときひとりの女が島に漂流してくる。いづみという女は世の中で流行り出している奇病に侵されているのだが、貝類学者が見つけてきたイモ貝という貝の毒にやられて病を完治する。するとその噂を聞きつけた奇病の患者たちが島にやってくるようになって……。

Ca2uVSwUYAABt-F

 世界は不思議に満ちている。貝類は昆虫類に次ぐ種類を持つそうだが、どうしてそんな様々な形態を持つのか誰にもわからない。海の底のサンゴの美しさとか、巻貝のらせん形状とか世界には謎ばかり。この映画も謎を謎として提示しているようで前衛的なものを感じさせる。昔観た『アンモナイトのささやきを聞いた』という作品を思い出した。

 寺島しのぶ演じるいづみは貝の毒にやられると死に掛かって走馬灯というか何かしらの幻影を見る。その何だかよくわからない幻影の描写がとてもひとりよがりなものに感じられた。何だかわからないけれどスゴイだろみたいな感じだろうか。その押し付けがましさはいづみが貝類学者の押しかけ女房として振舞う感じともよく似ているような……。

 個人的にはお気に入りの橋本愛が巫女さんのような雰囲気で登場するところが眼福で、それだけでも観る価値はあるとは思うが、全体的には前衛風味が鼻についた。


『ワンダフルワールドエンド』 さよなら男ども、そしてガーリーな世界へ

 『スイートプールサイド』松居大悟監督の最新作。

 主演には橋本愛と蒼波純。

 この映画の主人公・詩織(橋本愛)のあこがれの存在を演じるのは大森靖子で、この映画は彼女のミュージックビデオが元になっているとのこと。大森靖子という存在をどう説明すればいいのかはわからないが、椎名林檎的な憑依型のシンガーソングライターで、言わばちょっと普通じゃない世界を持っている。それは男に媚びるようなことがないガーリーな世界らしく、だからこの映画のキャッチコピーも「さよなら男ども。」だ。

 NEOBK-1755213

 中学生の亜弓(蒼波純)のあこがれは、動画配信などで“かわいすぎるキャラ”(あまりウケてない)を演じているマイナーなネットアイドル・詩織(橋本愛)。そんな詩織のあこがれはあるミュージシャン(大森靖子)で、彼女たちはゴシックロリータの格好に身を包んでいる。

 詩織は一応彼氏と同棲しているけど、そこに亜弓が転がり込んでくる。普通なら三角関係を形成しそうな展開だけれどそうはならない。その関係からはじき出されるのは彼氏で、詩織は亜弓と女の子同士の世界を形成することが最高だと知ってしまう。だからそこで「古い世界」は終わりを告げ、「新しい世界(ガーリーな世界)」がやってくる。そんな「古い世界」の男たちはゾンビになって生き永らえるほかなく、少女たちはワンダフルな「世界の果て」、桜の花と菜の花の咲き乱れる場所へとたどり着く。

 

 松居大悟の登場人物は突拍子もない予測不能な行動をとるようだ。『スイートプールサイド』のときはそれが狂気に見えたのだけれど、『ワンダフルワールドエンド』ではアンビバレントな葛藤が登場人物にそんな行動をさせている。亜弓は詩織へ想いが通じたとき、なぜかそれを受け入れられずに逃げ出してしまう(多分すぐには信じるほどができないほど嬉しかったから)。また、亜弓の母は亜弓を詩織から引き離そうとするわけだが、亜弓の反抗に遭って訳のわからない行動をする(あまりの意外性に一拍子おいて笑えてきた)。

 この映画の世界観は大森靖子の歌に彩られているけれど、その大森靖子のファンだという橋本愛は主役を楽しそうに演じていて、いつも以上に橋本愛が魅力的な映画だったと思う。世界が崩壊するあたりのシークエンスで、橋本愛がひとりで踊り出すところが何ともよかった。

 芸能事務所の社長を演じていた利重剛は『スイートプールサイド』にも出ていたけれど、橋本愛の主演作『さよならドビュッシー』の監督でもあり、橋本愛をやさしく見守る人のいい感じがよかった。



橋本愛がほとんど出突っ張りでがんばる『さよならドビュッシー』

 橋本愛主演のミステリー。ピアニストを目指す遥(橋本愛)とルシア(相楽樹)は仲の良いいとこ同士。親を亡くしたルシアは遥と姉妹のように暮らしていたが、ある日火事が起きて片方が焼け死んでしまう。

 この先、ネタバレもあり(あまり関係ないとは思うけど)

img_432335_11130106_0.jpg


 原作は『このミステリーがすごい!』の大賞受賞作とのこと。つまりミステリーとして読まれているはずだ。しかし映画版においてはその謎は陳腐なものに成り下がっている。
 この映画『さよならドビュッシー』がミステリーとして成立していないのは、映画というジャンルの性質上仕方ないことなのだろうと思う。原作小説では文章だから謎として成立するアイディアも、俳優が現実に演じている映画となるとそうはいかないからだ。遥とルシアのふたりのうち火事で助かったのはひとりだけ、生き延びたひとりも全身やけどで顔にも整形を施して元に戻したとなれば、だいたい謎となるものの見当はつく。
 だから、全身包帯で現れた生き残った片一方はまったくの橋本愛の顔だけれど、『私が、生きる肌』みたいな様子で登場するものご愛敬だ(同じ整形ものの『私が、生きる肌』にはびっくりしたが……)。だからそんな謎よりも遥=ルシアの成長物語として、あるいは音楽ものの青春映画として楽しめばいいと思う。

 遥にピアノを教える岬洋介は『のだめカンタービレ』などでピアノの吹き替えをしていたというピアニスト清塚信也。演奏するピアノがうまいのは当然だけれど、いかにも音楽家といった風貌も映画に合っていた。いつも無表情な印象の橋本愛も、整形したばかりという設定もあってその無表情にも理由があるし、雨のなかで自分がルシアであると告白する場面なんかは真に迫っていたと思う。知らぬ間に別人として生きることになってしまったルシアの想いにも泣かされる。



ギャラリー
  • 『下衆の愛』 映画というクソみたいな女にはまる
  • 『PARKSパークス』 橋本愛による吉祥寺十題噺
  • 『雪女』 見どころは雪女の熱いラブシーン?
  • 『雪女』 見どころは雪女の熱いラブシーン?
  • 『オトナの恋愛事情』 どちらが気楽にセックスできるか
  • 『母の恋人』 懐かしの顔だけれどちょっと気恥ずかしい
  • 『誘惑は嵐の夜に』 母と娘の入れ替わりコメディ
  • 『ジムノペディに乱れる』 ロマンポルノ再び
  • 『無伴奏』 懐かしいあの時代?
最新コメント