サイの角のように 独りよがり映画論

映画について自分勝手な感想の備忘録。ネタバレもあり。 ほかのブログから引っ越してきました。

行定勲

『ジムノペディに乱れる』 ロマンポルノ再び

 『世界の中心で、愛をさけぶ』『ピンクとグレー』行定勲監督による初のロマンポルノ作。「日活ロマンポルノ」リブートプロジェクトの1作。

ジムノペディ

 ロマンポルノに色々と制約があるのは知っていたのだけれど、「10分に1回絡みのシーンを作る」「7080分前後の上映時間」「全作品が同じ製作費」「撮影期間が1週間程度」という、かなり厳しい条件があったことまでは知らなかった。今回の『ジムノペディに乱れる』もそんな条件のもとで製作されたからだろうか、無理やりに絡みのシーンが挿入されてくるようでかえって苦労している感じがした。

 今ほどポルノが氾濫していなかった時代にはそうした条件が目玉となったのかもしれないけれど、今ではネットでいくらでもそんなものは転がっているわけで、絡みの部分が足かせになっているようにも思えた。

 

 芦那すみれ岡村いずみをはじめとする女優陣は皆さんきれいで、当然のことながら脱ぎっぷりもいい。絡みのシーンとなるたびにジムノペディが流れるという律儀な展開はだんだんと笑えてくる感じもするものの、劇場内に笑いが漏れることはなかった。主人公の映画監督・古谷慎二(板尾創路)が背負っているものはそれなりに重く、事故で入院中の妻のために金策に走ったりしつつ映画を撮ろうとしているわけだけれど、映像としては陰鬱な感じはほとんどない。

 日の光をふんだんに取り入れた撮影は行定監督らしい部分なのかもしれないけれど、わざわざ行定監督が参加する必要があったのかともちょっと思わないでもない。本当に撮りたかった脚本はなぜか却下されたようだし、あまり気が乗らなかったのだろうか。もともと行定監督のラブシーンってあまり印象にないのだけれど、威勢がよかった『GO』でも柴咲コウの初体験シーンはひどく凡庸だったと思うし、ロマンポルノという枠組みに合う人と合わない人がいるのかもしれない。


『ピンクとグレー』 物語と夏帆の意外性を楽しむ

 『ひまわり』『GO』『真夜中の五分前』など行定勲監督の作品。

 原作はジャニーズタレント・加藤シゲアキの同名小説。

 原作は読んでないからわからないけれど、映画版は脚本の段階で色々手が加えられているとのこと。

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 幼なじみの3人、リバちゃん(菅田将暉)とゴッチ(中島裕翔)とサリー(夏帆)。成長した男子ふたりはたまたま街でスカウトされてことでモデルとなり、役者などをやってみたりするようにもなる。そのうちにゴッチが役者として売れ始めると3人の関係も変わっていく。次第に疎遠になっていった3人だが、人気スター・白木蓮吾として活躍中だったゴッチが突然自殺することで世界が一変することになる。

 わざわざ予告などにも触れられているように、半分あたりの段階でそれまでと世界が一変することになる。役者というのは嘘を本当のように演じるわけだから、そんな人たちの話だけにありそうな気もする。なぜゴッチが自殺するのかはあまり説得力がない気もしたけれど、それなりにひねりもあって楽しめた。菅田将暉はやはりうまくて、世界の変容と合わせて役柄も変わるわけだけれどどちらもいい味を出している。

 個人的にはサリーという主人公たちの幼なじみ役を演じた夏帆に意外性があってよかった。最近の『海街diaryみたいに、これまでの役柄はかわいらしいイメージしかなかったのだけれど、この作品では蓮っ葉な感じの女を演じている。中島裕翔とのベッドシーンもあって、上半身裸の姿を後ろから捉えたシーンなんかもあった。しかもその次のシーンではご丁寧にも鏡のなかには裸の胸もチラリという演出もある。白黒の映像だし、一瞬だからバストトップはわからないけれど、ちょっとドキッとする。

 知らなかったのだけれど、園子温監督が映画版を撮った『みんな! エスパーだよ!のテレビ版では夏帆が不良少女役で、パンチラなんかも見せているのだとか。何だかそっちのほうが気になってきた。

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『真夜中の五分前』 生き残ったのはどっち?

 行定勲監督の最新作。主演には三浦春馬と、中国のリウ・シーシー

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 時計修理工の良(三浦春馬)は中国・上海で働いている。たまたま出会ったルオラン(リウ・シーシー)という美女に心惹かれるようになるのだが、彼女には双子の妹ルーメイ(リウ・シーシーの二役)がいた。ルーメイは映画プロデューサーの婚約者ティエルン(ジョセフ・チャン)がいた。

  『スイートプールサイド』『百瀬、こっちを向いて。』に続いて、たまたま四角関係の映画ということになるわけだけれど、『真夜中の五分前』の場合、女が双子というのが特殊で、しかも途中でその片割れが亡くなってしまう。もともとほとんど見分けが付かなかったふたりだけに、生き残ったのはどちらなのかというところが後半の焦点となる。美男美女によるラブ・ストーリーなのだけれど、どうにもノレなかった。

  ルオランとルーメイは双子で見た目に変わりはないのだけれど、性格には違いがある。良が最初に出会ったルオランは、どちらかと言えば大人しく、ルーメイは自由奔放に見える。そしていたずら好きのルーメイにルオランは自分の人生を奪われたと感じている。婚約者のティエルンと出会ったのもルオランが先だったし、役者をやろうと考えたのもルオランが先だった。ルーメイは後から来てルオランの人生を奪ってしまう。

 しかし、ルーメイ側の意見ではそれは逆転する。ただ、そのルーメイは本当にルーメイなのかどうかは明らかでないという混乱ぶりで、ふたりの本来の姿はいまひとつ理解できなかったこともあり、思わせぶりでゆったりとした展開にもまったくついていけなかった。

 三浦春馬演じる良の位置づけがどうにも中途半端に見えたのは気のせいだろうか。恐らく生き残ったのはルオランなんだと思うのだけれど、そのルオランがルーメイになりすますことで自分の人生を取り戻したのだとしたら、単に良は振り回されただけということになるのだから。

 それから「5分遅れた時計」というものの意味合いもピンと来なかった。しかもその罰で自分だけ生き残ったなどとのたまう良は、またルーメイに5分遅れの時計を贈るというのはどういう意味なんだろうか。縁起が悪そうだけれど。

 原作とは異なる日本と中国との合作になっているようだ。出会いのきっかけとなる「時計を贈る」という行為は、中国では、その発音が死を連想させ、プレゼントに時計は贈らないのだとか。

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